音波の薄皮

その日に聴いた音楽をメモするだけの非実用的な日記

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サンバースト / The Birthday (2021 FLAC)

リリース後に聴いて以降、耳を通せずにいたこのアルバムを。

明るさと切なさとが両立しているのが今作の特徴だったのだな。もちろんこのバンド、そしてチバユウスケならではの、デカダンで刺さる楽曲も多数収録されているのだけれども、その体温、質感がこれまでとは微妙に異なっている。

アーティスト写真で見ることの出来るチバユウスケの姿が、ここ数年で一気に年相応のものになっていることも、このアルバムの姿を紐解く何かの鍵になるのかもしれないとも。

歳を重ねて丸くなるなどと簡単に片付けるわけではさらさらないけれども、年齢なりの深みは確実に現れているように感じられるのだよね。

世の中を少し斜に見る姿から、それを直視しながらもアイロニカルであることを忘れない姿へと変わってきたことが、素敵な大人の姿としてとらえられる。生き様の根底にあるのはロックそのものなのかもしれないけれども、そこに人生の深さと渋さを重ねて歌い上げる様もまた、ロックの一つの有り様なのではないかと。

このバンドも2006年のデビューアルバム『Rollers Romantics』のリリースからもう16年も経っているわけで、それだけ年月を積み重ねれば、メンバー各々の音に対する姿勢も確実に変わってくるだろう。

それが反映されているのかどうかはともかくも、音はどことなくTHE BLUE HEARTSになっているかのような、そんな爽やかな音色が感じられるのと同時に、それらがアルバム内のピースとして有機的に働いていることも、本作が心地よいロックアルバムとして目に映る理由なのかもしれないな、とも。

変化を受け入れることは実のところはそれほど抵抗のあるものでもない、それが人間だよ、と演奏を通して訴えかけてくれているような、自分の背中を押してくれる作品となっているのであります。

サンバースト (通常盤)

宇宙 日本 世田谷 [Remaster] / Fishmans (1997/2016 FLAC)

Fishmansのポリドール三部作は「純度の高いポップス」や「究極のドリーミーポップ」などと形容してもよいのかもしれない。だがそのような簡単な説明で片付けられるほど薄いものでも決してあるまい。

音の配置、その純度の高さ。歌詞における世界の純度の高さ。トータルでのポップスとしてのクリアさ。澄みきり視界が開けている世界。完全なる覚醒のもとで目覚めた朝の思考であるかのように。

水準なるものを生み出す世間という不思議な機関から逸脱した上で、ポップスとしての懐の広さと覚醒感をも持ち合わせているこれらの音楽は、人が人としての形のままで天に昇りながらも、その作り出す影は地上を軽やかに歩み進んでいるかのごとく響く。

そのぽっかりと空いてしまった中間地点でさまよっているのは、そこから取り残された、そこへとは行けなかった、やはり市中の、世間に属するただの人間か。

混沌とした現世において、清濁を併せ呑まないことには人は壊れるか外れるかしてしまう。残念なことであり、いや、幸いなことでもあるが、人は無垢なままで生きることは出来ない。そのことを認識出来る人は、恐らくうつつの世界で生きていくことを難しく感じているだろう。

佐藤伸治とはどのような人であったのか。もちろんそれを知る由はない。作り出された音楽から察する、思い巡らせるより他にあるまい。だが、それはきっと幸せなこと。人を人として知ることは幸せであるとは限らない。

それでも音楽は人から作り出された鏡のようなものである以上、その音が語る人となりは必ず存在する。私が思い描く佐藤伸治像はそこから形成される、常に人の鼓動を天から俯瞰している、もしかすると音楽における考えは天に昇っていたかもしれない、少しこの世界では生きにくいものを感じていた人なのだ。

宇宙 日本 世田谷

IM A SINGER VOL.3 / ToshI (2022 FLAC)

手元にありながらもまだ聴いていなかったので再生。実は聴くのが怖かった。並んでいる楽曲を見て恐れわなないていた。

案の定、いきなり1曲目の「タマシイレボリューション」から、タマシイひん向かれてもぎ取られて改革されるかと思った次第。

X JAPANの頃からこの人は真剣にやればやるほど、気合いが入れば入るほどに、ギャグとの紙一重になる、実に生真面目なボーカリストだということをすっかり忘れていた。

のっけこそそのような感じでスタートさせられたわけだけれども、ミュージカル曲では情感のこもったボーカルを聴かせてくれますよ。

そしてバラード曲を歌わせればこの人は一級品のボーカリストだという事もすっかり忘れていた。女性ボーカル曲を歌いこなせるハイトーンボイスであるだけでは決してなく、楽曲が持つ素敵要素を上手にすくい上げる声の持ち主なのだよね。

収録曲で最も自分的に鬼門になりそうだった「難破船」も、ここではややあっさり味であると感じられたのだけれども、無難にこなした感あり。こればかりは色々と難しすぎる曲なので致し方ない。例によってそのチャレンジ精神を買います。

また、どの曲とは言わないけれども、同じパーツを比較的単純に繰り返す楽曲にはこの人は向いていないかもしれない。楽曲としてドラマティックな展開を見せる楽曲にこそふさわしいボーカリストなのではないかと。

全てが素晴らしい出来であるとは決して言い切れないけれども、期待値よりは比較的高めの印象かな。ToshIのボーカリストとしての魅力を味わえる好盤ではないかと。

そうそう。オリジナル曲の「葉ざくら」が予想していた以上にしみる曲でしたよ。これだけでも結構収穫だったかもしれない。

IM A SINGER VOL.3 (通常盤/初回プレス)(特典:なし)

So Special Christmas / MISIA (2020 96/24)

そろそろ街はクリスマス色になってくるのかしら。在宅勤務をしていると街中の雰囲気がよく分からなくなってくるな。

出勤のために朝外へ出て、冷たい空気を肌に受けながらイヤホンからクリスマス的な音楽を聴く、などと言うことも今年はなさそうだしね。

まぁ、まだ12月にもなっていませんがね。窓の外は雨だし。東京に雪景色が見られるようになるまでには、まだまだ季節が進んでないしね。街路樹のイチョウもまだ黄色い葉をたくわえているし。

そんなこんなの中でこのアルバムを。クリスマスのイントロダクションを奏でるかのごとく。

So Special Christmas

CATALOGUE THE BEST 35th anniv. / BUCK-TICK (2022 FLAC)

Disc4を聴いた。そろそろ真面目に何かをメモっておきますかね。

今回のこの5枚組ベスト盤は、各ディスク開幕の1曲がその盤の世界観を物語っているところが親切な作りであり、また興味深いことであるな、と。

ゴシックな聖歌風のイントロから導き出される耽美な「JUPITER」で幕を開けるこのディスクは、さながらこの盤がそのような曲世界の集合であることを象徴しているのではないかと。その流れで「ドレス」を持ってきてこのコンパイルをネットリと盛り上げていくところもまた面白い。

BPMをぐっと落とした実に聴きごたえのあるボリューミーな楽曲が並び、勢いで聴かせるだけではないバンドのキャラクターが浮き彫りにされているのもまた興味深いことであり。

どのようなアーティストであれ、ベスト盤は得てして幕の内弁当的になりがちなのだけれども、今回は35周年を記念した5枚組と言うマージンを持っていることもあってか、バンドが作り上げてきた各楽曲のキャラクターを掘り下げることに成功しているのにも感心するのであって。

ディスクごとにリマスタリングエンジニアを世界各地から別々に立てていることもあってか、どれもこれも音質の密度が非常に高く、統一感を持って作られているあたりも聴き手である自分にとってはうれしいこと。

35年分の歴史をこのような形でパッケージし、適切なお色直しを施した上で再提示する。それは長年のファンに対するサービスとしても理想的な形であるだろうし、自分のようにつかず離れずで聴いてきた一リスナーにとっても新発見の多い、過去をもう一度遡ってみようかと思わせる作品集としてしっかりと機能している。

CATALOGUE THE BEST 35th anniv. [通常盤] [5SHM-CD]

ARISA Ⅱ SHAKE YOUR BODY FOR ME / 観月ありさ (1992 FLAC)

TKプロデュース作品ではないけれども、TK音楽を貪りつくしたい時には欠かせない1枚。

しかしまぁ、90年代も遠くになりにけり。このアルバムも30年選手になりましたか。

とは言えども、自分の中では90年代のJ-POPサウンドは現代2020年代のサウンドとシームレスに聴き捉えることが出来ます。おそらく「打ち込み4つ打ちサウンド」が今でも通用するからではないかと。もちろんシンセの音色やらメロディの詰め込み方やらには大きな時代の差異がありますがね。

遡ってこれが80年代になると、そこに初めて時代の落差が発生するように思えるのだよね。完全人力サウンドメイキングから、完全セルフサウンドメイキングへと大きくかつ確実に転換したのが90年代音楽の特徴ではないかと。

今さら私が語るほどの物でもありませんが。真新しい観点もないしね。

SHAKE YOUR BODY FOR ME

PC入力環境構築完了

先日少し語るに触れた、PC入力新環境のベーシックな構築が完了しました。

ハードウェア的な構築をしてみると、なんだか要塞になってしまいましたよ。まぁ、休日くらいこのような環境の中でインドア生活を送ってもよいのではないかとね。

あくまでも音楽がメイン。それを聴きながら時折文字を入力したり、ブラウジングしていたり、的な生活になるとよいな。

PCはHPによるRYZEN 5搭載のマシン、非常にシンプルなものを。

キーボードはリアルフォースのBluetooth対応キーボードを。

マウスは現時点ではPCオマケの物を使っていますが、本日中にロジクールのトラックボールが来る予定。

まぁ、色々な意味で「ようやくここまで来たか」と言った感、ある意味においては感無量でありますね。

2022年11月23日の要塞

THE GREATEST HITS-小室哲哉作品集 S- / V.A. (2006 FLAC)

同時発売の「a」と併せて立て続けに聴いた。

寝起きに居間へ出るとNHKの小室哲哉をフィーチャーした番組が流れていたので、最後まで見通したのだよね。

番組内容はもう散々語り尽くされた小室哲哉の音楽家としての過去と、そして未来の小室哲哉像を本人が語るものであったのだけれども、まぁ、思春期から青春時代にかけて彼の音楽にべったりと張り付いていた自分としては、何はともあれ動いているてっちゃんがそこにいることに掛け値なく感動するわけでして。

そんなこんなの朝から昼にかけてこれを聴いていたのであります。

THE GREATEST HITS-小室哲哉作品集 S- THE GREATEST HITS-小室哲哉作品集 a-

globe / globe (1996 FLAC)

globeの初期4枚の音源は、いずれも2016年のハイレゾリマスタがイマイチだったと、認めなくはないけれども認めないとね。

音の離れはCD音源の方が間違いなくよいのですよ。ハイレゾリマスタ音源は音がぼやけて仕方がない。低域を欲張りすぎたのだろうな、あれは。

globe

マーラー:交響曲第7番《夜の歌》 / ショルティ, シカゴ交響楽団 (1971/2017 Hybrid SA-CD)

人間として怠惰に過ぎる時間を過ごした後は、やや復活をしてこれを流しながら諸々の身の回りの整理など。

BGMとしてマーラーを流している俺格好いい的中二病的に。

人間として破綻した後には、日本人として言葉が破綻してやがる。