ブルックナーをスピーカーで聴くのは久しぶりのような気がする。
お気に入りのネルソンスではなく、自分にとってのブルックナー入門だったヴァントとケルン放送交響楽団のそれで。
演奏に引き込まれる。
パリッとたくましい金管、ふくよかかつ柔和な木管、歯切れよくそれでいて滑らかな響きを持ったストリングス。オケとしては決して一流どころとは言えないかもしれないが、演奏が聴き手に響けばそれが全てではないかと。
この音源が録音された時期から既に45年が経過し、その間に恐らくブルックナーの解釈もどんどんと進んで行ったのだろう。ここでのブルックナーと例えば最新式のネルソンスのそれとでは、演奏の力量も指揮者による解釈も異なっていることが聴いて取れる。録音技術もまた然り。
立体的な緻密さを楽しむのであれば後者。しかし最新型が全て正しいとは言えないのがクラシック音楽のみならずあまねく音楽の常。それらを比較し聴けるこの贅沢さを享受できることは幸せの極みではないかと。
このようにブルックナーを聴いていると、自分の中にある音楽に対する姿勢を改めて再認識するに至ることが多い。現時点で自分にとってのブルックナーは、音楽そのものを均し、考えるための存在なのかもしれない。