音波の薄皮

その日に聴いた音楽をメモするだけの非実用的な日記

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氷川きよし座長公演 / 新宿コマ劇場

50歳60歳70歳のお母さんを招待した、氷川きよし主演の学芸会。結構面白かった。シートピッチが狭くて、お尻やら膝やらが痛くなったのが難だけれども、生まれて初めて入った大人の殿堂は、なかなかに土産物屋の大凝縮で面白かったのであります。

第二部のコンサートでは、氷川きよしの声の伸びを堪能。刺したら弾けてしまいそうに高密度な中高域の伸びは、さすが本職という感。それほどに第一部がご愛敬だったということもあるのだけれども。

一方で低域への伸びはまだまだ甘い(音が決まらないゆえに、最初のアタックでうまくごまかしてしまう)けれども、そこは文句をつけたいポイントなのではなくて、今後まだまだ開拓されていく余白としての魅力。そう思わせてしまうところも、実力派天然系ゆえか。歌もアクションもテレビのそれよりもアグレッシブだったあたり、演歌世界の蓋を感じてみたりみなかったり。下衆な勘ぐりか。

それにしても演歌のコンサートでは、パーカッションがフル駆動ですな。観ていて全く飽きなかった。演奏する方は休みがなくてつらかろう。

ステージビジュアル面での効果も狙ってか、ホーンセクションを4人(Tb,Tp×2,Sax)を入れて、会場をさりげなく盛り上げていたのも興味深いところ。シンセを3人も入れていたのに、ブラスを生にする絶対的な必要性は限りなくゼロに近いものね。派手さを狙った新御三家メドレー「お嫁サンバ」「私鉄沿線」「情熱の嵐」とあわせて、エンタテインメントに重点を置いた構成になっていたのは、第一部が森の石松話だったこととのギャップゆえかな。

「白雲の城」に始まり「番場の忠太郎」で終わった本編。もちろんアンコールは「きよしのズンドコ節」「箱根八里の半次郎」で、完璧に決めてくれました。もちろん憧れのきよしコールも決めてきたし。これぞカタルシス。

歌手生活6年目のコンサートで、演目のそのすべてがヒット曲というのは、一見さんには優しいだろうし、先に触れたおばさま方にとっても、生演奏生歌本人生出演カラオケみたいな感覚で、非常に距離が近いものに感じられるのかもしれない。お高くない、という意味で。リピーターを作る、そして手放さない手法というのは、テーマパークのそれと共通しているのだね。

東京での公演であることと、カード会社貸切のイベント性の強い公演だったこともあってか、客席にはやや冷めた雰囲気もところどころあったので、次は是非、地方公演で観てみたいと思った心。もしくは座長公演ではなくて、純粋にコンサートツアーをのぞいてみると、もっと純粋に楽しめるかもしれない。本当に面白かったっす。