音波の薄皮

その日に聴いた音楽をメモするだけの非実用的な日記

当コンテンツではアフィリエイト広告を利用しています

BEST / 中島美嘉 (2005)

オリジナルアルバムを聴いたときから 「ベスト盤なら、きっと好きになれるんだろうな」 と思い続けていたアーティスト。…なんて書くとしゃっちょこばっちゃうけど、このベスト盤は案の定聴きやすく、メロディがすんなりと耳に入る、もしくはついつい耳が奪われる佳曲揃いの選曲に。これを待っていた。

「没個性」 やら 「選曲ミス」 やら、内外諸々のネガティブコメントは多々発生するのだろうけれども、声のキャラクターという名のアクが強すぎるボーカリストが蔓延する中で、この淡さと 「売れている」 という事実はなかなか貴重なのでは。

それを端的に証明しているのが tr.1 の「AMAZING GRACE」 でしょう。わざわざクレジットや売り文句で飾られなくても明らかに 150% 綾戸智絵なアレンジすらも、中島美嘉ならではの 「なんとない中島美嘉さ」 感覚で覆ってしまっているところが、実は全てを物語っているんだろうと。

与えれたアレンジの意外性が注目されることも多いけれども、そのアレンジ自体が真新しいものでは決してないわけで。振れ幅の大きさが注目材料になり、その振れ幅に対して構えすぎることなくメロディをなぞっていることが、この人の一番の魅力なのでは。だからこそ、全く違うタイプの曲が並んできても、メロディという基礎キャラがしっかりと色づけをしてくれるので、散漫なイメージを与えることなく、また途中で聴き飽きることもなく、もちろんお腹一杯になることもなく聴き通せるんだろう。あまりにもお重が過ぎた幕の内弁当的ベスト盤が好まれる昨今ではあるけれども、なんでも詰め込めばいいってもんじゃないのだ。

その点でも、あまりに似通った雰囲気を持つ曲を並べなかったのは、ナイスなさじ加減だったのでは。 「接吻」 が入っていないのはある意味惜しいのかもしれないけれども、そうするとどうしても 「Love Addict」 のこってり感と干渉しあってしまうような。

唯一もったいなさがあるとすれば 「GLAMOROUS SKY」 へのつなぎの曲間。極端な話、あと 3 秒あってもよかった。この曲は沢庵なのだから。

しかし「CRESCENT MOON」 は何度聴いても気持ちよい名曲だ。うっかり広瀬香美がこの曲を書かなくて本当によかった。この寸止めの軽やかさは、やっぱり今のヒットチャートでは希有な存在であることの証明なのだ。中島美嘉がウケている限りは、まだまだ売れ筋商品のカタログも健全で捨てたもんじゃないな、と。