音波の薄皮

その日に聴いた音楽をメモするだけの非実用的な日記

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永遠 / ZARD (1999)

静かなアンセムともいえる表題曲でスタートする8th。

それを書くのはZARD作家陣初登場の徳永暁人。全体的にビーイングお抱え作家の中から若手の楽曲をふんだんに採用し始めているのが今作の大きな特徴。アレンジも徳永暁人が半分を抱えている。

この年は倉木麻衣のデビューイヤーと言うこともあって、ビーイング女性ボーカリストのトップ交代を目論んでの動きもあったのかもしれない。それが故にか、倉木麻衣を支えることになる大野愛果の作品もここで初めて取り上げられている。

また、この作品がリリースされた年にはZARD初のベストアルバムがリリースされている。それまでのZARDの総決算が行われる年にリリースされたオリジナルアルバムなのだという視点を持って臨むと、下記のことも理解出来る。

サウンド面ではそれまでの楽曲では生楽器を使っていただろうドラムスに打ち込みが積極的に取り入れられたり、コーラスやストリングスをふんだんに使ってみたり、バッキングにハードなギターを持ってきたりと、これまでにない作風にシフトチェンジしている。ZARDの作品と言うよりは、それまでのビーイングの得意技を学習してきた若手によるビーイングサウンドのリプロダクションという趣きすら感じられる。

初期ZARDに感じられた「これがZARD?」という疑問符が、別の意味で新たに現れる。いや「これもZARD!」と感嘆符に置き換えるべきか。少なくとも全盛期にあった「安心を買う」という行為から解き放たれて、「ZARD再解体」という転機になった1枚だろう。そもそもが実体の怪しいバンドから始まったZARDだ。何でもあり。それまでのZARDはもうここにはいない。方向性を一気に変えたという点では、勇気ある1枚。