音波の薄皮

その日に聴いた音楽をメモするだけの非実用的な日記

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ハイレゾの明るい未来を信じて

HDTracksにてCarole King『Tapestry』が20%OFF。192kHzが約2,000円。96kHzが約1,500円。音のキレイさを求める音源ではないので96kHzでも十分だと思うのだけれども、そもそもLegacy EditionのCDを持っている身としては、わざわざハイレゾを買うべきかどうかというのは結構な悩みどころ。

同じくLegacy EditionのCDを持っているStevie Ray Vaughanの『Texas Flood』をハイレゾで買ったときは「果たしてハイレゾをわざわざ買う価値があっただろうか?」と悩んだので、その二の轍は踏みたくない。

そうだ、せっかくならあえて避けていた音質比較をしてみようと、『Texas Flood』を持ち出して、Legacy Editionとハイレゾ版を比較。その結果…「わからない」。

そうなんだよね。この70年代から80年代のロック&ポップスに関しては、ハイレゾ音源の恩恵を受けにくい録音がされているのではないかと思うくらいに、ハイレゾのメリットを感じ取ることが難しい。それはBilly Joelの『Stranger』を聴いた時にも思ったこと。「これがハイレゾ?」と思うくらいに、ごくごく普通のポップスの音がそこにあった。こればかりは比較対象もなく、本当に一発で「これはハイレゾだ!」と聴き決めなくてはならない状況だったので、余計に「ハイレゾって何なんだろう?」と考え込んでしまった次第。

アナログマスターをハイレゾにするにはきっと相当なトリートメントが必要とされて、単純にデジタル変換しただけでは、ハイレゾのメリットを享受することが難しいのではないかと。その点、カラヤンの例のお買い得チョイス盤はしっかりとしたトリートメントがなされていたようで「あ、今、自分はハイレゾ音源を聴いている!」と実感することが出来た。ダイナミックレンジをフルに使い切るようなマスタリングがそこではなされていたのだ。

もしくは非常にデジタルに向いた音作り(それこそMichael Jacksonのような)がなされていた音源が、やはりデジタルであるところのハイレゾにすることで、何かしらのメリットが得られるということになるのだろう。

となると、そのトリートメントを受けた古い音源はきっとハイレゾの一潮流になるだろうし、今後現れる新録音源、それこそハイレゾを意識して作られた音源こそが、ハイレゾの何たるかを知ったレコーディングがなされて、ハイレゾのメリットが生きてくるのだろうと思われる。

ハイレゾはまだまだ紆余曲折魑魅魍魎玉石混淆の過渡期にあって、「何でもいいからハイレゾにしてしまえ」という動きがあることはきっと実際のところあり得ない話でもないのだろう。きっとメーカーも色々と探りを入れ始めたばかりの時期で、そのうちにハイレゾ向きの音楽の何たるかを理解する時が来るのだと思う。メーカーの経験とリスナーの経験の相乗効果で、「これはハイレゾ向きだな」と思える音源をピックアップして賢く用意・購入出来るようになれば、ハイレゾの前途は明るいわけで。

自分はその過渡期の中で、少しずつ散財をしながらハイレゾの何たるかを学習しているところ。それはいわゆる人柱と言うものかもしれないけれども、やっている本人は楽しいのだからそれはそれで良いのだろう。自分だって、そろそろ学習しつつある。今回のCarole Kingの一件もそう、Stevie Ray Vaughanの一件もそう。もちろん素晴らしいと思えるハイレゾ音源にも遭遇し始めている。それがなかったら、もう半年もあればとうにハイレゾを見捨てている。

CDで十分まかなえる音源は、わざわざハイレゾに走る必要はない。一部には「猫も杓子もハイレゾ」という動きもあるようだけれども、それは少々の不幸を生んでしまうかもしれない。数値的にハイレゾ音源がCDを上回っていることは重々承知。問題は数値ではなくて、ソフトごとに出てくる音なのだ。

「猫も杓子も」ではなく、「この音源がハイレゾに向いているよ」というガイドがあれば、せっかく新たな潮流として出てきた「ハイレゾ」なるものを、より幸せな気分で楽しむことが出来るのだと思う。

そのガイドは何も出版物(紙媒体・Web媒体問わず)に限ったことではなく、ごまんとある個人サイト、ブログから放出されていけば、それで十分だろう。問題は発信者の数がまだ少ないことで、ハイレゾに対する回答の欠片の一つでも持っているユーザーがまだ少ないことを意味しているのかもしれない。それらユーザーが声を上げて「ハイレゾガイド」を発信することで、せっかく斜陽のオーディオ界を救うべく現れたハイレゾを盛り立てることが出来るかもしれない。

その中の一人として、自分が購入したハイレゾ音源が本当にハイレゾ向けだったか否かを微力ながら発信出来れば、それに越したことはないと思う。どれもこれもを買うわけにはいかないけれども、自分が直感的に「もしかしたらこれはハイレゾに向いているのでは?」と思える蓄積は少しずつ出来はじめているので、そういった音源を積極的に聴いて行きたいと思っている。もちろん音が良いと言うだけで、音楽的に興味がない音源には手は出さないけれども。

まだまだ産声を上げたばかりのハイレゾ音源。自分は長い目で見守って行こうと思っている。自分が聴くわずかなジャンルの音楽でも、素晴らしい音源のものはポツポツと現れ始めている。それこそが「ハイレゾには未来はある」ということの証明になっていると信じて。