薄々感じていながらも懸命に否定していたのだけれども、自分、坂本真綾作品で一番好きなのは『DIVE』でも『少年アリス』でもなく『イージーリスニング』なんだな、やっぱり。
収録楽曲の濃縮された感覚と、自分がこのアルバムにまつわるありとあらゆる記憶とが思いきり凝縮されると、このアルバムという一つの形になるのだよね。その記憶というものは、決して良いものばかりではなく、いや、むしろほろ苦いものなのだけれども。棚の奥底にしまってあるその苦みを、なぜか急に引き出したくなることがあって、その時に利用するのがこのアルバムなのだよね。引き出した途端、奔流のように押し寄せてくるのが分かっていても、どうしても聴かずにはいられない、そう言ったグラヴィティのようなもの。
では、なぜ今、そのようなアルバムを再生し始めたかと言うと、それは日曜日の夜だからですよ。夢とうつつの境目。ある種の逢魔が時。もしかしたら日常と非日常の境界線上にある時間とも言えるのかもしれない。だからこそ、そこから逃げてどこかに行こうと考えた時に、その苦みから逃げることは出来ないのだよ、と自分に言い聞かせるようにして聴くアルバムなんだろうね。