音波の薄皮

その日に聴いた音楽をメモするだけの非実用的な日記

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シベリウス:交響曲第5番 / ベルグルンド, ヨーロッパ室内管弦楽団 (1998/2012 CD-DA)

今さっきまで、自分は清冽と語るにふさわしい音楽を聴いていた。済みきった空気をそのまま音として描いたかのような作品と演奏。音の細部に精霊が宿る。大気の精。自然以外の造形物が何も存在しない世界の描画。そして聴き手である自分の耳も心も研ぎ澄まされていく。

ベルグルンドのシベリウスはヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団の第1番&第5番のディスクを持っていたけれども、それよりも遙かに遠くまで見えてくる演奏。滑らかな大地を俯瞰していくかのような超常的な世界。美しいと言う単語があまりにも陳腐に感じられてしまう純粋な結晶。それは水晶のようなものでもあり、化学式で構築された結晶のようなものでもあり。

ああ。言葉が全く持って足りない。自分のボキャブラリの貧困さを嘆く。これを言葉に置き換えることが出来たなら、きっと見えてくる世界もまた一層異なってくるだろうに。言葉がもっと欲しい。そう思わせるほどに深遠たる光景を見せてくれる音楽だ、これは。