音波の薄皮

その日に聴いた音楽をメモするだけの非実用的な日記

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J.S.バッハ : 無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ (全曲) / イザベル・ファウスト (2010, 2012/2018 SACD)

午睡をはさんで夕方から。

ファウストの演奏は、バッハの深淵を映し出す鏡。無伴奏であることで、譜面に描かれたバッハならではの音階が浮き彫りにされ、その意図するところ、心境、場面、それらが全て剥き出しにされる。その神経に触れるかの如く演奏が、聴き手である自分にはね返り、自分とは何者であるか、そしてこれからどこへ向かっていくのかと、その内面へと否応なしに向き合うことを要求される。

演奏家は流れていく音の一つ一つをなぞりながらもえぐり取り、その全ての音が聴き手との両者にとって意味をなすものとなる。音を追っていたはずの耳は、知らずうちに内省の時間を浮遊することに置き換えられ、自らの中にあるユニヴァースを測る行為へと昇華される。

時に音へと引き戻され、そして時に時空間を超えるまでの解放を持つ、その懐の広い演奏を前に、ややするとちっぽけでしかない自分を実感させられるかもしれない。しかしバッハの音楽が紡がれ引き継がれてきた時間を前にしたならば、やはりそれは正しいのだ。

2018年に生きる自分がどこに今いるのか。バッハだからこその音のコースターに乗り、そして探っていく旅への切符。それがファウストが描き出すバッハが与えてくれる、一枚の大きな世界地図ではないだろうか。

J.S.バッハ : 無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ BWV 1001-1006 (全曲) (J.S.Bach : Sonatas & Partitas BWV 1001-1006 / Isabelle Faust) [2SACD シングルレイヤー]

J.S.バッハ: 無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ BWV.1001-BWV.1006 (全曲)<アンコール・プレス完全限定生産>【SACD Single Layer】