指先が大気に別れを告げる瞬間
彼方の月
その姿が大きく滲んだ
溶け行く先
容れ物の形は何物にもとらわれず
ただ沈み行く力に任せては
己の溺れ行く様を見つめる
遠くからの目
接面に洗われる身体が感じた温もり
懐かしさの温度
開かれた扉
知らずにさえいれば
この慈しみに心さらわれることもなかったろうに
さまよい続ける汽水
笑みよ、全てを忘れさせて
声よ、この耳から消えないで
姿よ
告げた言葉が枷となり
沈み行く
ただ沈み行く
この背が終わりを覚える前に
これほどまでに不自由な言葉、止めて
生まれ変われない世界と姿なら
いっそ現をやめて、
やめてください
色の交わらない世界だと言うならば
いっそ現をやめて、
やめてください
- cut20190525 -