音波の薄皮

その日に聴いた音楽をメモするだけの非実用的な日記

Shangri-La / Mark Knopfler (2004 SACD)

人生、かくも苦いものかと、この歳になって今と言う時間と自分とを対比させ、省みることがある。

マーク・ノップラーのこの歌声とギターとが、その気持ちに拍車をかける。

時間は容赦なく自分の傍らを通り過ぎ、社会情勢も刻一刻と変わっていく。

自分も何も変わらずにはいられず、それでいて、何かが止まっているようなもどかしさを味わう。

マークの歌はそんな自分を慰めてくれもする。外の時間と中の時間の流れは別の物であってもよいと。

ゆったりと自分の時間を、時の流れの中にさらし、いつか何かがかみ合うときに、また何かを振り返ればよい、振り返ることの出来る時が来ると。

若い頃には分からなかったマークからのメッセージを、今、ようやく受け取ったような気持ちでその歌声に身を任せる。

人生、おそらくそんなに捨てたものではない。思い起こせば出会いもあり、奇跡もあり、喜びも悲しみも、生きてきた分だけ経験してきたはずであると、そう思わせる歌声。

SACDでこのアルバムを聴くと、トラックのシンプルさが際立ち、広がりのある低域が、音に落ち着きを与えていることに気付かされる。今まで購入を見送り続けていたことが不思議でならないほどの、オーディオ的プレゼンスの良さ。弾力としなやかさが両立した、好録音盤。