何度聴いてもこのライヴ記録体には唸らされる。
ライヴ音源にありがちな音の綻びを一切感じさせない、またそうであるとはにわかには信じがたい作り込み方と、一方で作り込み過ぎないバランス感の素晴らしさ。
宇多田ヒカルのスタジオ作品とは明らかに一線を画する、音の持つ体温の高さがここにはある。
それは全体的な温度感として音を支配しているのではなく、表面的な触感の冷たさを保ちながらも、その下に確固としてある体温の高さを伝える音楽としての絶妙なさじ加減であるとも言える。
人間、宇多田ヒカルとしての、2022年に解放された音楽的発露の記録でありながらも、高次元でエンタテインメントとしても保たれている貴重な音源であると。