パワーに溺れるでもなく、リリカルに過ぎるでもなく、かといって中庸に甘んじるわけでもなく。
老成と言う名の衰えであるわけがなく、早熟と言う名の若さであるわけもなく。
ポリーニという人の弾くベートーヴェンは、端正でバランスよく美しいと言った印象なのです。美しさだけを刻んでとらえれば他にも美しいと感じられるピアニストは存在しますし、端正さやバランス感覚も同様。ただ無闇に圧倒させられる演奏でもなく。
人間としての音楽的な懐が広い演奏、とでも言えばよいのかな。この印象を言葉として表わすのはなかなか難しいものがありますよ。
そのようなことを考えながら聴いていると、思わず踊ってしまった指がチェケラッチョのポーズになっている、そんなあんぽんたんな私が聴いているクラシックなのです。言葉にするなど、とてもとても。