この作品とも連れ添うようになってからもう結構久しいのですが、時間を重ねれば重ねるほどに、ここでのベースとギターがしんしんと穏やかで静かなる対話しているかのように、作品と私もまた対話をするその深度がより深いものになっていくような気がするのです。
音の間に心をさまよわせる隙を持った作品は、音に自分の心の状態を反映させてくれます。今の自分がどこにいるのか、何を考えているのか、ふわりと思い浮かんだことを一つ一つキャッチし、再び自分の中へと取り込み、格納していく心の整理が進んで行きます。
形あるものとしてそれらを克明に心に刻みつけると言うほどまでに強い行為では決してなく、あくまでも風に舞い上がる羽根のように、そこに空気の動きがあってはじめて存在を認識するかのように、当たり前のこととその中にある新しい発見とが共存している、そのようなことを思い浮かべては消えていく様を眺めているのです。
思い浮かぶこととは命題と言うほどに大それたものではなく、人生における自分へのお題目と言った程度のものでしょう。それすらも手書きの文字として記し己に問いかけるほどのものでもなく、その時々に考え浮かんだことにつらつらと自分の言葉を寄せ、そして数時間後には忘れてしまうようなことなのでしょう。
このように記したことさえ忘れてしまう、その程度のものなのです。