音波の薄皮

その日に聴いた音楽をメモするだけの非実用的な日記

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LOVER ALBUM リマスター / クラムボン (2006/2016 DSD256)

クラムボンによる2006年リリースのカヴァーアルバム。今日は比較的「強い」邦楽ポップスばかり聴いていたので、この辺で一息つこうと。

ここで展開されているのは実に即興性の高いポップス。聴かせるためのポップスであるのは当然の事として、その性質からして、ある種の私的録音だったのだろうと今ならば捉えることが出来る。

と言うのも、完成度の高い、最早オリジナルの作品ではないかと思わせるほどのセツナチューン「波よせて」に続いて演奏されているのが、邦楽ポップの大曲「サマーヌード」。それを相当にずっこけている、文字通りのデモトラックとしか言いようのない録音で収録されているため。

演奏前のすっとぼけた会話、完全にしくじっている演奏、試行錯誤している様、これ以上のユルさもないだろうと言うアンサンブル。この曲で唯一救われる要素があるとしたら録音品質の高さくらいなものだった。

ファンならば楽しめるのだろうが、どうにもこうにも玉に瑕としか表現出来ない記録物が収録されている事に、これまで結構な抵抗感をおぼえたもので。

それが唐突に今「私的録音」なる単語が頭の中に降ってきたために、全てが合点した次第。そうと決まれば話は早い。試行錯誤しながらも最後にはしっかりと修正していく演奏からして、クラムボンの音楽的身体能力の高さをいかんなく発揮している作品だと思うに至ったわけであります。

多彩な録音手法で魅せてきたことの多いクラムボンが、純粋なる3ピースでインプロビゼーション的会話を繰り広げている演奏も実に興味深いものであり。

なんだかんだで好きな作品なのですよ。

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