音波の薄皮

その日に聴いた音楽をメモするだけの非実用的な日記

当コンテンツではアフィリエイト広告を利用しています

DEZOLVE@コットンクラブ ライヴ鑑賞記(4/2)

フュージョンという音楽ジャンルを好む層は、そのライヴ会場に足を運んでみると分かりますが、もう自分と同世代か年上の方ばかりなのです。日本のフュージョン黄金期が私たちの中学から高校時代ですから、然もありなんと。当然の事なら演奏する側ももう結構なお歳を召してしまいまして。

そのような中、彗星のごとく現れたのがDEZOLVE(ディゾルヴ)と言うバンドでした。メンバーの全員が90年代生まれ。前述の黄金期からそれ以降に生まれているのです。

それまでの日本のフュージョンはキャッチーなメロディの上に技巧的なテクニックを乗せるスタイルでしたが、彼らの演奏は次元が異なります。

超技巧的とも言えるテクニックの上にメロディを乗せているのではないかと思えるほどにとにかくテクニカル。それでいながらテクニックに溺れることもなく、とにかく「格好よい」としか表現できないほどに硬派なフュージョンミュージックを奏でているのです。

いつかは彼らの生演奏を観てみたいと思っていたところにアルバムのリリースとレコ発ライヴが発表され、その機会に恵まれました。場所は東京駅前のコットンクラブ。映画「BLUE GIANT」でもその会場がモチーフになっていた、ブルーノートに至るジャズの殿堂とも言えるライヴハウスです。

客層は…確かに年齢層は高かったのですが、女性の割合が比較的高かったのが特徴的。フュージョンはある意味マニアな男性しか聴かないジャンルだと思っていたのですが。

期待していた演奏はと言うと、4人のメンバーの誰を見ていればよいのか、とにかく演奏の要所要所で細かく主役が変わっていきます。それはソロ回しなど言う呑気なものではなく、目まぐるしく主人公が変わり、またその裏でやはりバカテクな音が奏でられているのです。

ドラムとキーボードが常にアイコンタクトをしながら演奏をリードしている、いや、むしろ余裕を持って遊んでいるのではないかと思える中、ベースとギターは自分の世界に入り込んで音を紡ぎ上げていきます。

とにかく常にそこにあるのが涼しい顔で矢継ぎ早に繰り出されるテクニックですから、見ている方はたまったものではありません。それが「誰を見ていればよいのか」と言うことにつながっていくのです。演奏に対するアイディアとテクニックが高次元で融合し、楽曲としてのメロディに昇華される様は見事としか言いようがありませんでした。

アルバムの1曲目を飾る楽曲が25/16拍子と言う、変態としか形容のしようがない楽曲。ライヴはその曲から始まり、これが実にキャッチーに奏でられる。それでいながらバカテク。このアンビバレンツが聴き手に快感を導かないわけがありません。みなそれを期待して集まっているのです。そしてレコーディングされた音源よりも遙かにアグレッシヴに演奏されるその姿に一発でノックアウトを食らいました。もはや笑うしかありません。

終始そのような状態です。1時間半のライヴアクトはあっという間に過ぎ去ってしまいました。

そのような日本のフュージョンにとってのハプニングやらターニングポイントとも言えるライヴが進む中、自分の頭の中に降りてきたのは「テクニック・ネイティヴ」なる造語でした。

演奏の中にテクニックがあるのでは最早なく、テクニックは全てに含有されているのです。そこから聴き手が思い思いに好みのツボを見つけ、DEZOLVEの4人によって奏でられる音の世界にはまり込んでいくのだろうと。

その後アルバムがさらにヘビーローテーションになったのは言うまでもありません。このアルバムのリリースそのものが、日本のフュージョンシーンにとっての事件なのだと、ライヴの後日談的に気がついたのです。

やっとインプレッションが書けました。自分が受けた衝撃を整理するのに時間がかかりました。そんなライヴに高校時代からの、やはりフュージョンを愛する友人と行ってきたのでありました。

particleofsound.hatenablog.com
↑こちらはライヴ翌日の鑑賞メモ