最近、仕事の昼休みにはイヤホンをして、楽曲単位でシャッフル再生をさせていることが多く。予期せぬ楽曲が流れてくる楽しさがあるのですよ。
今日はこのアルバムからの楽曲が再生されて「おや?」となったのですよね。こんなに格好よい曲があったのか、と。
ジワジワと来るアルバムであるとの印象はあったのですが、一発の強さがある楽曲もあったのかと。帰宅後にふとそれを思い出してアルバムを頭から再生。
これは、いや、ジワジワ来るというレベルではないですね。ガツンと来る。キャッチーさという意味での派手さを持つアルバムでは決してないけれども、一つ一つの曲が芯をしっかりと持っている作品。有り体に言えばしなやかな強さを持つ曲たち。
坂本真綾が持つ哲学性とプログレッシヴ感が両立してそこに存在しているのですよね。イデアと混沌。
思えば彼女も大人となり母となり、紡ぎ出される言葉と歌には、その強さと脆さが両立しているかのよう。それらを曲の上で演じるのとは異なり、彼女なりの等身大の自然さ、現時点での自分の反映が込められているのだろうと思うに至ったわけです。
『記憶の図書館』とはこのアルバムのタイトルであるけれども、記憶は過去のものであるとは限らず、現時点での己がここにあるからこそ存在する、正に瞬間的な今の反映なのですよね。そのごくわずかな時の積分が、時の帯としての自分の記憶なのでしょう。
記憶を持てるのは自分以外にあり得ないのと同様に、表現を表出させる源も自分自身の中にしかあり得ない。坂本真綾の今作に込められた思いは、そこにはあるのだろうとの考えにも至るわけです。
ここまで大げさに記したので、最後にストンと落としてみると。
「なに、この坂本真綾のユニヴァース!」
これが言いたかっただけです。