これまでどれほどの再生回数を重ねてきたのだろうか。振り返ってもきりがないほどに聴いてきた作品。J-POPにおけるB-SIDEにある作品だと思うのだよね。メインストリームに位置する1枚では決してないけれども、愛する人はとことん愛する、作品もこちらを愛してくれる、それほどまでの抱擁力を持っている作品であると。
その抱擁力はどこからやって来るのだろうかと考えながら聴いていたのだけれども、それは菅野よう子の優しい視線によるものではないかと思い至った次第。まだ少女から脱していない坂本真綾をどのように引き立てるか、伸ばしていくか、それらを母性的な観点から全面的に支える音楽的アクションが、ここには大きく横たわっているのだよね。
愛を受けながら様々な表情を持った歌に挑戦していくこの当時の坂本真綾の伸びしろは、相当に大きなものだったと今に至る活躍を見れば十分に理解出来るものなのです。
このリリースからかれこれもう25年以上が経過しました。25年も経てば、当時25歳のまだまだ若造だった自分も50歳のいい歳をしたおじさんになるわけです。あの頃、自分の中の乙女回路を全開にして書いていた、それこそこのアルバムに大きくインスパイアされて綴った一文の存在をふと思い出しました。
今では絶対に書けない、自分で語るのもなんですが、あの瑞々しい文章は、この作品が持つ永遠の瑞々しさにどっぷりと浸かり、あてられてしまって綴ったのだろうと、今でも容易に想像がつきます。
25年前の自分はそれほどまでの恋愛をしていたのでしょうか。人を好きになることをどのように捉えていたでしょうか。恋愛回路など最早ゼロになってしまった自分が、あの頃の自分を素直に慈しみながら、同時にこの作品の世界に触れておりました。
そのような休日の昼下がりであります。
わたしの手をにぎってくれるあなたが好き
DIVE / 坂本真綾 (1998) - 嫁聴け(1998-2016)
ぼんやりしているわたしの横で
優しい目をしているあなたが好き
わたしはあなたが好き
あなたは両手を大きく広げ
開けた窓から新しい空気を深く吸い込んだ
わたしはふざけて
胸に手を組んで床に倒れた
見下ろした
あなたの目はなぜか遠かった
知らない海の色に見えた
なぜだろう、全て失った気がした
「こわい」
そう言うとあなたは何も言わずに
消えてしまった
そして二つのマグカップに
暖かいミルクを運んで
一つを床に転がるわたしの横に置いた
窓際で
それを飲むあなたの横顔が好き
カップを手のひらで包み
わたしは目を閉じた
あなたの匂いがしたから
「好き」とつぶやいた
あなたは当然だという顔をして
ミルクを飲み干した
「好き」
もう一度つぶやいてみた
