音波の薄皮

その日に聴いた音楽をメモするだけの非実用的な日記

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咲くや、この花 左近の桜 / 長野まゆみ (2013)

長野まゆみの作品を読むのは10年ぶりくらいのことかもしれない。なんとなく書店で目にとまったので、久しぶりに読んでみようかという気になった。帯には「このうえなく風雅で官能的な幻想奇譚集」と書かれており、「あぁ、長野まゆみは男性同士の少し湿気のある人間関係を描くのが得意な人だったなと思い出した。

この作品も、一話一話が軽妙に、しかし舞台はこの世のものではない世界で描かれている。うつつの中で夢の扉をうっかり開いてしまった挙句、気づくと何事もなく時間軸は進んでいるという基盤の中で、確かに奇譚と言える物語が紡がれる。以前読んでいた時よりも、すんなりと自分の中に入ってきた感がある。長野まゆみは久しぶりに手を出してもいいかもしれない。問題は何を過去に読んだかをすっかり忘れてしまっていることだ。