音波の薄皮

その日に聴いた音楽をメモするだけの非実用的な日記

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BEST BEST BEST 1984-1988 / 吉川晃司 (2005)

引っ越しのどさくさに紛れて、実は行方不明になっていた一枚。段ボールに梱包されたままになっていた荷物をほどいていったら、予想外な場所に入っていて安心した次第。同時発売の三枚のうち、真っ当に買ったのはこの一枚だけなので。

80年代ってなんだったんだろう。いや、あのね、かっこいいのよ。生活感やら思想やらを取っ払ったところに棲息するリゾート意識が、実生活と全く乖離しないちょっとしたイベントレベルに存在している現実感というか。そういう時代に、アイドルとして方便を求められた存在として、吉川晃司は TARZAN 的危機感を持っていた流行脅迫観念的世代とうまくマッチしたんじゃないかなと思うんだ。

たとえば、僕自身が朝の腹筋・背筋・腕立て伏せ・スクワットを軽くこなしてから目を覚ますというのは、当時の生き様を強く持っていきた人間に軽く影響されていたからなのかもしれないし、リアルタイムにそこにいた世代が持っていたフィジカルなコンプレックスが、吉川晃司を憎みつつも退けずにはいられなかったジレンマにつながっていたというのであれば、実はそれはそれで、今後、自分よりも一回り上の世代に接するときの一つのキーワードとして、有効活用できる何かがあるということなんだよね。

もちろん、高みの見物としてそう語っている自分としてみたら、単なる流行歌の一環として接している存在が、この当時の吉川晃司〜 COMPLEX の流れなのですが。すなわち、実は同世代であるチェッカーズと比較して、古さが目立たないところでのシーケンス的ビートと譜割りが、もしかしたら今でも何らかのシチュエーションで 「今」 として成立してしまうんじゃないかという期待すら持ってしまうわけなのです。

が、それを証明するチャンスにはそうそう恵まれないだろうというのが、当座の課題でもあり、あ、いや、僕はそんなに期待しないですよ。期待する人の勝手ではありますが、もし彼らがそこに期待したとしても、歌いながら僅かでも疑問やら恥じらいやらをそこに持ってしまえば、元の木阿弥になってしまうだろうことぐらい、私が言うまでもないとは思うのですが。はい。