音波の薄皮

その日に聴いた音楽をメモするだけの非実用的な日記

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新釈 走れメロス 他四篇 / 森見登美彦 (2009)

2012年以降、しばらくぶりに読む森見登美彦。

相変わらずの京都を舞台にした頓珍漢な連作短編集。通して読むとある種の青春群像劇とも捉えることが出来る。原作はあくまでもタイトルと大ネタを頂戴した程度のもので、中身はすっかり森見節に書き換えられている。とにかくダメな学生を書かせればピカ一の作家だけれども、その中でも少々毛色の異なる「桜の森の満開の下」が個人的にベスト。ドタバタ劇であるのならば表題「走れメロス」がベスト。もう、訳の分からない展開を望むのであれば「山月記」。どの短編も、結局は心のどこかに虚無感のような物を感じさせる内容になっているのは、森見登美彦ならではのことなのだろうか。あまりにも久しぶりに読むので、過去の作品の雰囲気をすっかり忘れてしまっていた。