音波の薄皮

その日に聴いた音楽をメモするだけの非実用的な日記

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空間 / Polaris (2006)

tr.1で宣言しているように「空間=空気+時間、なんだよ」ということを、得意としていた空間浮遊術を全く(!)使わずに表現してしまったか。形容詞と化した空間をなげうった先に行き着いたのがこのタイトルか。来たなぁ。

PolarisであってPolarisではない。もしあのタイミングでベストアルバム『音色』を出していなかったら、きっとPolarisは混沌としたバンドとしてとらえられてしまうだろうし、また、今作に収録されている曲のためにこれまでの浮遊系楽曲が座るためのシートが失われてしまうのもあり得ない話だし。そう思わせてしまうほどに次のフェイズに入った、じゃなくて、訣別の後、痕跡を残さずに転居してしまったような。

圧巻は当然のごとくtr.8。

多くの人がそこに触れずにはいられないだろう「禁じ手」を全て解放した上で10分の大台に乗せてきた。何を意味するのか、何をほうふつさせるのか、そしてそれらがどこから導き出されるインプレッションであるのか。一つ一つを指摘しても何も始まらない。あれは終わってしまったことだから。あとは僕らの中で勝手にアンプリファイさせていくしかないのだから。

ただ、かつてそこにあった「歩くための時間」は「憩うことを許さない闇中の明滅」であったのに対し、ここに生まれた「歩くための時間」は「腕にはめた時計が正確に刻む一分一秒」という程度の比較を持ち出すことくらいは勘弁してもらえるとありがたい。