音波の薄皮

その日に聴いた音楽をメモするだけの非実用的な日記

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1STST / TESTSET (2023 96/24 Amazon Music Unlimited)

TESTSET、1stアルバム。

経緯は複雑にしてあれど、METAFIVEからの発展的スピンオフと捉えた。そこから取り出した上澄みには、腰に響くかのような研ぎ澄まされた線の太さがあった。そのような二律背反がここに成立している。だからこそプリミティヴに、ダイレクトに、フィジカルへと入り込んで膨れ上がり、そして響いてくる。

黙って聴いているだけではもったいない。音の命じるままに身体を動かすべくしてある、強靱なダンストラックとしても有用すぎる肉感的なテクノサウンド。そのフォーマットはしっかりと踏まえつつも、音のレイヤーや展開させる手法はテクノの枠にはとどまらない。

テクノとロックの融合と形容するのはあまりにも安易な話だ。その積集合部分をクローズアップさせたら、この上ないボーカルダンスサウンドが出来上がっていた、とでも言えばよいか。高橋幸宏が歌っていてもおかしくはない揺らぎあるメロディやそのフラグメントは、LEO今井のボーカルが乗ったことで俄然攻撃性を増した。音の底に潜む静謐と狂気が増幅される。

トラックの作りもエンジニアリング的手法も、そこに砂原良徳が一から携わっている段階で完全に保証されている。かく言う自分は初めこそCDリッピングの44.1/16音源で聴いたものの、その緻密さに腰をぬかして慌ててハイレゾ96/24音源に切り替えたほど。

それでなくとも砂原良徳の仕事は常に神経質に鋭利なもの。音に代えて剥き出しにしているそのナーヴを、ここではしばらくぶりにリアルな、生の仕事として目の当たりにすることが出来る。「Heavenly」などはその最右翼だろう。

最後に、インタヴュー記事を読み驚いたのはドラムは「叩いてる」とのこと。なるほど、この官能的なまでに身体を貫く蠢きは、それが作り出す揺らぎから来ていたのかと。個人的には要所要所で効果的に刻まれているハイハットの音に、偏執的なビート感をおぼえた。

偏執を紡ぎ上げ積み上げると、このように間口の広い、それでいて聴き手に刺さる部位が極端に異なるだろう音が仕上がる。胞の内側から外へと突き刺し破る直前に訪れる膜の手触り。私にはそのように捉えられた。

1STST (特典なし)