音波の薄皮

その日に聴いた音楽をメモするだけの非実用的な日記

家庭教師 / 岡村靖幸 (1990/2012 FLAC)

「いつかは聴き直しておかないとな」と思い始めて早幾年。リマスタ盤が発売された直後でさえ、そうやったまま放置になっていた。

このアルバムはリアルタイムで聴いている。多分3回くらいは聴いたのではないだろうか。そして下した判断が「面白くないな、これ」と、世間の評価とは裏腹に、自分の中ではつまらないアルバムとして放置されることになった。それは前作『靖幸』が抜けの良いポップスの集合体であり、全体的に明るいカラーに包まれており、どの曲も「何か面白い要素」が沢山詰まっていると、その時は考えていたのだ。当時、齢16歳。当時の自分の幼い音楽経験では、まだまだこのアルバムの全貌を知るには相当な背伸びが必要とされた。そしていつの間にか存在を忘れ去っていた。

時間が経つにつれ、このアルバムの評価はどんどんと高まっていく。それでも当時の自分が下した判断から抜け出すことが出来ず、気が付くと齢40を過ぎる中年になっていた。その段階でふと『家庭教師』ってどうなんだろう?と思うに至ったのだ。

結果、「あ、こりゃ名作だわ」と一聴するだけでシャッポを脱いだ。統一されたプラスティッキーなサウンド。よりセクシャルに掘り下げられた歌詞の世界。さらに大人になった楽曲たち。『靖幸』と『家庭教師』は同じ人物が作った作品であっても、別物として扱わなければならなかった。岡村靖幸がカメレオンであることは、楽曲提供やプロデュース業でも十分に分かっていたこと。それでいながらも、徹底した岡村靖幸くささと言ったものがどの作品でも漂って来るという類い希なる共通点、個性を無視してはならなかった。

それが今分かったと言うだけでも、まだ間に合ったかもしれない。下手をすると「岡村靖幸?やっぱ『靖幸』だよ」で終わっていたかもしれないのだ。自分の中ではそこに『家庭教師』がすんなりと入り込んできた。非常にプライベートな雰囲気が漂う作風であっても、聴き手が入り込む門戸は開けている。それがこのアルバムの最大の特徴だと思うに至ったのだ。