午前1時。気がつくと椅子の上で寝入っている自分がいた。
夜、音のない世界、自分の部屋。
何をするでもなく、何かしたいことがあるでもなく、しつこく部屋に居続ける小バエの1匹が飛び回るのを視界に捉えながら、時間だけが朝へと向かっていく。
ふと頭の中にメロディが流れ出す。
ようやく音楽を聴く気になった。スガシカオ。時計はそろそろ4時になろうとしている。
メンソールの刺激すら生ぬるい、何かが去勢されてしまった電子タバコをくわえ、トラックの数が重なっていくと同時に、それもまた本数を重ねていく。
残り香すら存在しないそれに、ここまで何も残していない自分の影を重ねては、誰も見ていやしない苦笑いを浮かべ、噛み締める。
だらしなさの極みにある身体を絞るためだけの、ぬるいダイエット茶を一口。その味さえもフェイク。
何かを記していたその手を止め、また一本。
誰かが歌っていた200円とちょっとのメンソール。今や500円を超えてしまった。
それは価値が上がったことになるのか。同時に自分の価値は停滞どころか、落ちてやいないか。
逡巡してまた電源を入れる。スガシカオの歌詞が自分に斬り込む。ナイフを手にした主人公が自分をザックリと切り刻んでいく。
フェイクをもう一口。
部屋の温度さえもぬるく保たれ、湿度だけが強引に抑え込まれている。それは快適か。自分をただこの部屋に籠もらせるための言い訳にしていないか。
すべてはぼんやりとした自分の手すさび。時間の浪費すら。
夜明けが近い。スガシカオはまだ終わらない。日の出の刻を迎えたとしても、そこにあるのはきっと垂れ込める曇天模様。
気分だけが暑苦しい熱帯夜。ようやく明けようとしている。
VネックのTシャツには汗が浮かび上がることもない。どこまでもドライ。
去勢とフェイクと50%の湿度。
全部が嘘でもいい。夜明けが来ることだけが信用たるものであるならば。