音波の薄皮

その日に聴いた音楽をメモするだけの非実用的な日記

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Family / スガシカオ (1998 FLAC)

午前1時。気がつくと椅子の上で寝入っている自分がいた。

夜、音のない世界、自分の部屋。

何をするでもなく、何かしたいことがあるでもなく、しつこく部屋に居続ける小バエの1匹が飛び回るのを視界に捉えながら、時間だけが朝へと向かっていく。

ふと頭の中にメロディが流れ出す。

ようやく音楽を聴く気になった。スガシカオ。時計はそろそろ4時になろうとしている。

メンソールの刺激すら生ぬるい、何かが去勢されてしまった電子タバコをくわえ、トラックの数が重なっていくと同時に、それもまた本数を重ねていく。

残り香すら存在しないそれに、ここまで何も残していない自分の影を重ねては、誰も見ていやしない苦笑いを浮かべ、噛み締める。

だらしなさの極みにある身体を絞るためだけの、ぬるいダイエット茶を一口。その味さえもフェイク。

何かを記していたその手を止め、また一本。

誰かが歌っていた200円とちょっとのメンソール。今や500円を超えてしまった。

それは価値が上がったことになるのか。同時に自分の価値は停滞どころか、落ちてやいないか。

逡巡してまた電源を入れる。スガシカオの歌詞が自分に斬り込む。ナイフを手にした主人公が自分をザックリと切り刻んでいく。

フェイクをもう一口。

部屋の温度さえもぬるく保たれ、湿度だけが強引に抑え込まれている。それは快適か。自分をただこの部屋に籠もらせるための言い訳にしていないか。

すべてはぼんやりとした自分の手すさび。時間の浪費すら。

夜明けが近い。スガシカオはまだ終わらない。日の出の刻を迎えたとしても、そこにあるのはきっと垂れ込める曇天模様。

気分だけが暑苦しい熱帯夜。ようやく明けようとしている。

VネックのTシャツには汗が浮かび上がることもない。どこまでもドライ。

去勢とフェイクと50%の湿度。

全部が嘘でもいい。夜明けが来ることだけが信用たるものであるならば。