音波の薄皮

その日に聴いた音楽をメモするだけの非実用的な日記

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千紫万紅 / デラックス×デラックス (2023 48/24)

超重量級バンド、デラックス×デラックスの1stフルアルバム。

このバンドの存在をつい先日まで全く知る由もなかったのだけれども、ひょんなきっかけで聴いてみたところ、自分の中で超絶ドツボにハマりまして。

particleofsound.hatenablog.com

タイミングよく1stアルバムがリリースされたもので、音源を勢い勇んで購入しましたよ。発売から2日で軽く5回はリピートしております。多分今聴いているのが6回目。

それにしても何だろうね、この「結果としてのオチが確信犯だった」的な匂いは。本人達が至って真摯に音楽に取り組んでいることは、間違いなくこのサウンドに反映されており、それは演奏が極めて真面目なことにも現れている。「こう来たら、そう、こう来るよね」と言ったお約束展開もしっかりと押さえられている。

昭和歌謡を土台にしているとはいえ、そこにあぐらをかいて狙いすましているイヤなあざとさもない。実に雑多に音楽を喰らい尽くしていることもよく分かる。メンバーが持つだろうそれぞれのルーツが有機的に絡み合っているに違いない。

いや、でもね。手放しで褒めるのも何か悔しいのよ。

それでも聴けば聴くほどに、狙いの刃を懐に隠して、表面的にそれをなぞっているように思わせ、その実、やはり狙ったところに全て落とし込まれているのだよね。

演奏が真面目であると先に触れたけれども、例えばチープに感じられる薄いシンセの上物も、これ以上厚くなってしまったら音楽が完成してしまう。完成してしまったらこのバンドをこのバンドたらしめている遊びの要素、余白がなくなってしまい、きっと出来過ぎでつまらなくなる。

安くなる一歩手前ではなく、安い姿、そのど真ん中を貫くことが、現状の本バンドの本質を最も効果的に映し出せるのだろうと。その点においてもやはり狙われているのですよ。

それにしても、21世紀、この令和の時代に、自分は一体何を聴いているのだろうかと、軽く混乱することも事実なわけで。そこはかとないV系の香りもうかがわせつつ、やはりわかりやすく昭和歌謡を今現在に換骨奪胎してプレゼンしている。本作を聴きながら電車通勤をしていたら、妙な羞恥プレイに晒されているような錯覚に陥ったほど。これくらいだったらアニソンを聴いて通勤している方がよほど自分はマトモだと。

そんなこんなで実に恥ずかしくも、その存在があることを嬉しく感じられる作品であります。1回聴いて「こんなもんか」で終わらせるのは簡単だけれども、数回聴いて「ヤバくないこれ?」とハマってほしい存在であります。

…褒めすぎたな。

【追記】
アルバムを構成する曲順についても触れておかないと。

これが実に練りに練ったか、もしくはストンとハマったのだろうなと言った曲順の妙。

1曲目のトレードマーク的楽曲でガッツリつかみにかかり、続いてがシティ・ポップ路線。あちこちに蜘蛛の巣を張り巡らせた後に、その流れからバンドのオリジナル曲を連続で。「ダンシング・ヒーロー (Eat You Up)」で再びわかりやすくつかませると、同様の決めフレーズを持つ「恋してよDISCO」。そして尾を引き後を引く大団円へと。

見事です。この曲順しか考えられません。

千紫万紅