音波の薄皮

その日に聴いた音楽をメモするだけの非実用的な日記

当コンテンツではアフィリエイト広告を利用しています

2012撰

2012撰 (vox)の再掲です。

去年に引き続き、今年も低調でありました。でも、まぁ、下四半期以降は色んな意味で外に出て行くようになったので、去年よりは少しはマシか。そんなこんなな自分の状況で今年を振り返ります。2012撰。いつも通り、リリース時期にはこだわらずに、去年の12月から今年の11月にかけて聴いた作品から順位をつけずにピックアップします。

参照:成分2011 成分2012

空洞です
空洞です / ゆらゆら帝国 (2007)
出口から入れば入口に到達するかと思いきや、また再び出口に戻ってきてしまったという不思議なループ感と足元が覚束なくなってしまったような錯覚を覚える奇妙な一枚。このバンドは積極的には聴いてはこなかったけれども、ここまでドラッグな作品を構築する人たちだとは思わなかった。なるほど高い評価を得ているわけだと納得。



D-Formation(初回限定盤)(DVD付)
D-Formation / 茅原実里 (2012)
今年の声優アルバムの中では抜きんでてコンセプトが明確だった一枚。電脳世界を描くという意気込みがはっきりと伝わり、どこまでもつんざくような打ち込みサウンドと、ミッドローを絞りこんだボーカルにサイバー感を覚えた。通して聴くとぐったりと疲れてしまうところに、それなりのエネルギーが詰まっていることを実感させられた次第。



ぱみゅぱみゅレボリューション(通常盤)
ぱみゅぱみゅレボリューション / きゃりーぱみゅぱみゅ (2012)
中田ヤスタカのポップ&メロディアスサイドを凝縮して提示したら、こんなアルバムが出来てしまいましたという一枚。アーティスト名からは想像できない、ある意味普遍的に乖離したごく普通のボーカルが、逆説的にキャンディーテイストを産み出した。これまた通して聴くと疲れてしまう作品。



on the border[初回限定特典付き盤]
On The Border / 面影ラッキーホール (2012)
最早、自分たちの手癖だけで音を作ることに専念し始めたようなマンネリ感が、逆に新鮮に聞こえてくるという謎の歌謡曲バンド。詞の世界も曲のそれももう完全に放送禁止の世界に突き抜けているのだけれども、不思議とすんなりと受け入れられるようになっている。それは自分自身の慣れなのか、それともこのバンドが到達した一つの頂点なのか。



メカクシティデイズ(DVD付)
メカクシティデイズ / じん (自然の敵P) (2012)
それまで持っていた自前のボーカロイドへの印象を見事に打ち砕いてくれた。声質だけに依存せずに、電子音楽だからこそ可能になるメロディの乱高下を見事に描ききった一枚。バンドサウンドを中心に組み上げたという点も、音楽への感情移入がしやすかったポイントか。機械仕掛けなのにどこか切ない21世紀だからこそ可能になった新時代のサウンド。


Silver Age
Silver Age / Bob Mould (2012)
雪中強行軍。積み上がった雪山をブルドーザーで掻き分けるかのように進んでいく孤高のギターサウンドと、受け入れやすいメロディとが久しぶりに噛み合った一枚。SUGAR解散以来、ようやくこの人の本領が発揮できたのではないかと。DIYで構築されるロックよりも、バンドとして組み立てられたロックの方がこの人のポテンシャルを遥かに引き出す。


OPUS 〜ALL TIME BEST 1975-2012〜(初回限定盤)
OPUS ALL TIME BEST 1975-2012 / 山下達郎 (2012)
時系列に並べられた曲順が、この人の音楽職人としての変遷を見事に表現した希有なベストアルバム。辞典を開くかのようにひもとく楽しみに溺れる。決して流行のサウンドには乗らない、自らの土壌をしっかりと踏まえた展開でありながらも一本調子にはならない豊かさに溢れていた。



COVER 70's(初回限定盤)
COVER 70's / 柴田淳 (2012)
徳永英明がトラックの再構築の上にボーカルを乗せるスタイルであるならば、この作品は原曲の持つイメージを隅々まで尊重し、敬意を払ったボーカルを乗せる形で組み上げられている。それでいて決してカラオケ集にならないのは、癖が無いなりに感情移入しやすい声質のなせる技。



ONE VOICE,ONE GUITAR
ONE VOICE,ONE GUITAR / Saigenji (2012)
アコースティックギター一本、一発録りの緊張感をよそに、どこまでも軽やかに拡がる世界がこの人の真骨頂を表現することに成功している一枚。緊張感はある種の孤独感にもつながり、自分を中心とした世界の狭さを思い知らされ、独りで聴くことを前提に作られているようにも思われるという非常にパーソナルな作風。

                                                      • -

結果、10枚撰出にも至りませんでした。選出するハードルが上がったこともありますし、聴き込みが足りなかったという側面もあります。同じような音楽を繰り返し聴いているようなマンネリ感から逃れられなかったという印象です。選出したアーティストも、過去の自分の傾向からすれば非常にコンサバですし。リリース時に未聴の新発見組もゆらゆら帝国のみ。

そう言われてみれば、確かに音楽を購入することが減りましたし、レンタルする時も棚の前である程度ふるい落としてしまう傾向にありました。耳が肥えたと言えば聞こえはいいかもしれませんが、要するに冒険をしたくなくなったということです。これが吉と出るか、凶と出るか。まぁ、来年もまたよい巡り逢いが出来ますように。それと、音楽を聴く時間がもっと減りますように。相対的に実りある聴き方が出来ますように。切に願います。