音波の薄皮

その日に聴いた音楽をメモするだけの非実用的な日記

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ひこうき雲 [Remastered 2019] / 荒井由実 (1973/2019 96/24)

作業中に居間に出たところ、点けられていたテレビにてレコードでこの作品を鑑賞しているシーンに出くわしたので、その流れで再生。

しかしあれですよ。現代のゴージャスな大御所も、ここまで折れそうなまでに繊細なアルバムでデビューしたのですよね。この感性の鋭さとはかなさはなかなか類を見ない、もしかするとこの時代だからこそ成立したサムシングがあるように思えます。

今年は90年ディスカバーだったと先のアーティクルに記しましたが、同時に大御所の大御所たる所以を打ちのめされるくらいに知らされた、気付かされた一年だったように思います。大御所の精力的なライヴ活動に直に触れてみたり、ベスト盤でのその重みを実感させられたり、自分から積極的に情報を取りにいったり。

これは20代や30代の頃の自分ではまず考えられない行動ですね。大御所の取っ掛かりが分からず、また斜に構えていたこともあって、なかなかその音楽に自ら触れようとはしてこなかったのです。そのような自分も50代を前にして考え方が変化したのか、ようやく彼ら/彼女らの凄みを理解出来るようになってきたのか。

その当時に作られていた音楽が今になって自分の身体へとすんなりと入り込む現象は、自分がその歳を越えたから起こることなのでしょう。それまで年上の方が作っていた音楽の、その作られた年齢を自分が越えたことで、ようやく音楽に入り込めるスタート地点に立つことが出来た、と。

今年はコンサバな一年だったと形容することも出来ますが、コンサバのコンサバであり続けられる理由もそこにあったのです。

なるほどそれならば自分も若手ミュージシャンの音楽から段々と遠ざかるわけですよ。年齢の差がどんどん広がっていく一方なのですから。

ひこうき雲