音波の薄皮

その日に聴いた音楽をメモするだけの非実用的な日記

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COVER EP『白』 / 川崎鷹也 (2022 44.1/16)

とにかく放って置いても名曲である楽曲が並んでおり、それらを歌うだけでも、歌い手の質によっては十分、悪く言えばお腹いっぱいになったりもするもので。

本作品においては、歌謡曲もロックもJ-POPもかつてのニューミュージックも、全てにおいて完全にポップスの枠組みに昇華させているところに凄みをおぼえた次第。なおかつ聴き手である自分を引き込むには十分すぎるパワーが存在する。

トップバッターの「愛燦々」からして、小椋佳のそれでもなく、ましてや美空ひばりのそれでもなく、無地のキャンバスの上から堂々と川崎鷹也自身の色で歌い上げているところに、シンガーとしての力量の底の知れなさを感じ取ることができた。

稀代の名曲たちを小手先でこねくり回すことが一切なく、素っ裸の状態から自分のものにしてやろうとする熱量、気概に満ち満ちている。それほどまでに曲と渡り合っている点が痛快の極み。いや、むしろ曲を喰らいにかかっているとまで感じられるほど。

それは挑戦者としての意気込みとも言えるかもしれない。そして全くそれが空回りせずに、楽曲との歯車をしっかりと噛合わせているところもまた、ここまで通して感じている恐ろしさに通じるのであり。

この歌を支えるポップスとしてのトラックを作り上げているのは誰なのかと調べてみれば、安心の武部聡志氏。ここにはストンと腹落ちした。なるほど、この職人の腕にかかり、そしてこの歌の力をもってすれば、ここまでの重力を持った作品が生まれるわけだ。

COVER EP『白』 (通常盤) (特典なし)