音波の薄皮

その日に聴いた音楽をメモするだけの非実用的な日記

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THE GREATEST UNKNOWN / King Gnu (2023 48/24)

King Gnu、2023年最新アルバム。

このバンドに対し、自分にとって取っつきの悪い、どこか据わりの悪い印象を覚えていた理由は、このバンドが得意としているだろうその不協和音的響き、もしくは音としての居心地の悪さをアンサンブルの中に落とし込む高度な技が、自分の耳をざわつかせていたからではないかとようやく気がついた。

それこそがこのバンドの魅力の一端なのだと分かると、今度は実に興味深い物として目に映るようになった。

このサウンドが広くウケているのだから、余計に興味深い。調和を求めることを得意とする、こと音楽に関してはそのものであろうリスナーがこれを強く求めるのだから。

不和とも言えるこのいびつさを突き詰め煮詰めたようなアルバム、インタールードを含めて21曲。ロックともポップスとも異なるフォーマット度外視の、King Gnuだからこそ可能とするいびつな楽曲が次々と繰り出され、その曼荼羅に取り込まれている間に一気に聴ききってしまう、一分の隙も与えないこの力強さ。

これが2020年式のJ-POPなのかと考えてみると、J-POPと言う枷は既に枷でも枠でもなく、形を持たない独自の姿にまで急激に変化したのだと感慨深いものすらある。

一アーティストが一ジャンルに縛られることなく、自在に音を繰り出し構築していく。リスナーがそれについていく、貪欲に求めていく。シンガロングに向いているとは決して言えないだろう楽曲たちで構成される「広く聴かれる」作品。作り手の成熟とリスナーの成熟とが正比例に右肩上がりとなっていることを証明しているかのよう。

録音的にも非常に面白い。スピーカーで聴きその音像のユニークさに驚くと同時に、音に対するアイディアを形とするテクニックまでもを備えているのだと感心させられた。これはヘッドホンで引き続き聴いてみても、二度三度と感銘を受けるのだから、これをシンプルに大したものだと言わずしてなんと言うか。音像の創作は既存のJ-POPが最も不得手としていた領域なのだから。

THE GREATEST UNKNOWN (通常盤)