『かぜよみ』がどうしても自分にハマらなかった理由は、菅野よう子が云々ということではなくて、単純に坂本真綾のボーカルが完全に「歌手」のそれになっているところによることが大きいのだろうと思った。
どことなく不安定な線の細いボーカルが紡ぎ出す「朝の世界」を表現したのが名作『DIVE』なのだとしたら、その『DIVE』がレコーディングされたタイミングというのは、まだ歌手としての坂本真綾が確立されていないアンバランスな平均台の上に成り立っていたものであり、その不安定さが自分の心を鷲づかみにして止まなかったのだろうと思うのであります。
ということで3月末にリリースされるベスト盤で、自分と坂本真綾との距離もある程度明確になるのだろうと思っております。僕にとっての坂本真綾ゴールデンイヤーの楽曲が中心になって編纂されるだろうベスト盤を聴き遂げて、それから次に進めるか否かというところにつながっていくのだろうと思うのであります。