音波の薄皮

その日に聴いた音楽をメモするだけの非実用的な日記

and... / 上白石萌音 (2017 ハイレゾ 96/24)

朝一と通勤の往路と通勤の復路と帰宅後に。

さて、帰宅前に聴いた段階ではどの曲が誰のペンによる物なのか一切分からない(「告白」だけは先行配信で秦基博だと言うことは知っていたが)状態で聴いていたわけですよ。とにかくたった8曲だというのに、よくぞここまでおもちゃ箱をひっくり返したような作品集に仕立て上げたなと、感心したり呆れたりといった具合で。

そして一点引っ掛かった部分は、僕が大の坂本真綾好きに起因するもの。今回のこの上白石萌音の1stオリジナルアルバムを前にして「さて、坂本真綾とどのように自分の中で差別化したらよいものか?」というクエスチョンが生まれてしまったのは事実。これに関しては回数を重ねる毎に「あ、坂本真綾には陰があるけれども、上白石萌音は基本的に『陽』であるな」という結論付けで納得。

そして恐らく一番の問題作で、かつ、究極の楽曲であろう「String」がずっとずっと気になって仕方がなかった。これは帰宅後に作曲者クレジットを見て、びっくり仰天すると同時に激しく納得。弦一徹のペンによる作品だった。なるほど、ストリングスをここまで大胆にフィーチャーした曲を書いて、かつポピュラーミュージックのカテゴリからはみ出すギリギリのラインでとどめることができたはずだ。

歌詞の点で面白かったのはラストトラック「ストーリーボード」。楽曲としてのストーリー性はもちろんのこと、歌詞が生み出す曲の展開といった点では群を抜いている。「ああ、そうだ、上白石萌音はアクトレスであった!」とようやくここに来て気付かせる、このニクい展開よ。

総じて面白い作品。コンセプチュアルな前作と比較してはならない、ポップシンガーとしての上白石萌音がどこまでこの世界でやっていけるか、その試金石。いや、十分に乗り越えている。突き放して客観的に見ても、非常に質のよい「ポップアルバム」として仕上げてきた。

こりゃ、上白石萌音という「歌手」は、この時点でもう怖い物なしだな。どんな楽曲を持ってきても、しっかりと自分の色に染めることができる。いや、染まることができるのか。表現することを生業とする彼女の人生にあって、歌手という一つの手段は、決して片手間に終わることのない、一生物の武器として、今後も続けて欲しいと切に願った次第。