故人を偲ぶと言うこと。
自分の場合、身近にいた人物を偲ぶことはそれほど多くはない。淡泊だからだろうか。自分の中を通過し、自分よりも先にこの世を去った方への思いは、どこか客観的だ。それが近い親族であろうと、友人であろうと。
むしろリアルタイムで聴いていたミュージシャンが遺していった音源を前にした時に、大きな喪失感を覚えることが多いように思える。
深夜のMichael Brecker『Two Blocks From The Edge』。1998年作品。
ここでのマイケルの演奏は、決して派手なそれではない。
音の主導権はメンバーに任せ、そこに時折思い出したかのように乗せるサキソホーンの調べに、故人のジャズに対するストレートな思いが伝わってくるようにも感じられる。
「こんなに素晴らしいミュージシャンがいたんだよ」と、自分の事でもないのに自慢をしたくなるような満足感。そして二度と新しい演奏を聴くことが出来ないと言う、逆説的、背徳的な高揚感。
最後に導かれる、捉えようのない喪失感。
人物としてパッケージされてしまったことは、決して悲しいことではない。誰にでも訪れる話。それだけのこと。
このアルバムは既に廃盤になっていた。カタログからすらも忘れ去られて行く中で、自分の中では存在がとどまっている。
亡くなると言うことは、そう言うことなのかもしれない。
何かを遺した人に対する思いこそが、自分の中では強いのだろうと。