より力強く、よりダイナミックに。
トラックメーカーAyaseがやりたかったこと、得意技が見えてきた感のある3rd EP。前作のリリースからも間を置かずに、テンポよく矢継ぎ早にリリースされてきた楽曲の勢いもあり、そのトラック群の説得力と輪郭の鮮やかさがより一層増したように感じられる。
全体として筋骨隆々かつ中毒性の高いトラックが並ぶ。その中でも最も象徴的に存在している楽曲「アイドル」が持っている鋼の筋力が、ある意味において集大成として位置しているようにも改めて感じ取られた。
この楽曲が持つタイアップ対象の世界観への踏み込み方は、ややすると寄せ過ぎの感もあった。しかしアルバムの流れとして組み込まれると、この異端と思わせながらもファットに極めた作りのトラックは、やはりYOASOBIサウンドの最新型であり真骨頂なのだと気付かされる。タイアップアニメの持つ勢いとYOASOBIが引き出しに持っていたパワーとが高レベルに結びついていたのだ。
今作は曲順にも配慮があったのではないかと思えるポイントもある。前述の「アイドル」を1曲目に配し、有無を言わせない構成にすることも出来ただろう。そこをリリースから間もない最新楽曲「勇者」を冒頭に置き、この新曲をイントロダクション的に扱うことで、収録楽曲に対する聴き手の興味関心を改めて喚起する作りになっていると見て取れた。
ラストトラックで完全に肩の力を抜かせるまで、適度な緊張感と疾走感を保ちながら展開されるEPとしての流れが、トータル30分台とは思えないほどの密度の高さを与えていることも今作の特徴として捉えられる。
デビューからの3枚で一区切りとする潮流もある中、YOASOBIの次の一手がどのように繰り出されるのか、その期待がまた高まってくる、底知れぬパワーを持ったEPがここにリリースされたと言える。
偉そうに書いたけど「ミスター」が好き。このテイストもAyaseの得意技だよね。