今年「なんかいいな」と思いながらも再生回数を重ねきれなかった1枚。まだまだあるよ。
スガシカオ独自の「情けなさ」を描くことに安定感が戻ってきた1枚。
歳を重ねるごとにその情けなさの描画は研ぎ澄まされ、その鋭さはトラックのシャープさにも反映されている。スガシカオだからこそ作り上げることのできる、その後ろめたさあふれる心技体の完全体と称してもよいかもしれない。
人生の背徳、もしくは自分自身に対する背信を描くことにかけては追随する者を許さない存在では元々あったけれども、ここまで来ると完全に孤高の「スガシカオ」というジャンルを作り上げることに成功した、盤石なものにしたなと、思わず唸ってしまう作品。
少なくとも心が澄んでいる人が作れる、聴ける楽曲たちではないことは確か。心に欠落を感じている人、何かがねじれている人、よじれている人にこそ彼の歌は響く。何かを埋め合わせるかのように。