Mr.Children、2023年時点での最新アルバム。
ここまで大きくなったバンドでも、まだこれほどまでの冒険が出来るのかと驚かされるとともに、それを素直に受け取らせる説得力を持った作品に仕上がっている。全体的にアコースティックギターの響きが印象的に映り、そしてアルバムの世界に絞られ、引きずり込まれていった。
どこか孤高なアシッドフォークの雰囲気にも似た孤高なサウンドが、私小説的、架空小説の世界を思わせるような感覚をも呼び起こされる。潔い気高さとでも言おうか。桜井和寿が持っていた世界は、かくもノーブルであったか。
ロックバンドがひたすらにロックである必要があるのかと問うかのような音の色合い。バンドとしての音を極限まで、いや、もしかするとやってはいけない領域まで踏み込み、削ぎ落としているが、このボーカリストが歌えばそれだけで十分にMr.Childrenとしての作品に仕上がる。その自信を持った上で送り出されたのではないだろうか。
そのインプレッションは途切れることも揺らぐこともなく、最後まで心地よい緊張とともに持続されていった。
この作品を聴き、肩の力を抜いたMr.Childrenと称するのは簡単かもしれない。もちろんそのような感覚を持つ瞬間もある。すでに再生産の域に入っているバンドだと思い込んでいた自分がいるが、まだまだ引き出しも可能性も底なしにあるのだと証明されたかのような曲たちに、しばし呆然としながらこれを書いている次第。
そしてアルバムが終わるとともに改めてジャケット写真を見ると、このショットが見事に作品が有するテイストを語っているのだと気付かされるのだ。
