音波の薄皮

その日に聴いた音楽をメモするだけの非実用的な日記

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サブスクリプション配信についてつらつらと

9月に入り、ユニバーサルミュージックが精力的にサブスクリプション配信拡大に向けてのインフラ整備とも言える音源投下を行っている。

9月1日に突如解禁された井上陽水の配信。そしてこれは事前予告があったが松任谷由実の配信が解禁された。

70年代から日本の音楽界を牽引してきた2大アーティストのサブスクリプション配信がほぼ同時期に解禁されたことで、音楽市場がサブスクリプション配信をより重要視することは当然の潮流になるように思える。

Mr.Childrenがサブスクリプション配信を解禁した際にも、その界隈では大きな話題となったが、今回の井上陽水と松任谷由実の解禁は、それとは少し事情が異なるように見える。

明確なのはそのファン層の違い。活動期間の長さに比例して、今回解禁された2者のファン層はMr.Childrenとは比較にならないほどに広い。それが上に広いと言うのが今回の特徴だろう。

この層はもう既にCDで全ての音源を揃えているコアなファンも多いことは想像に難くない。その層に対して「2018年の最新リマスタはサブスクリプション配信で聴けますよ」と訴えている。CDやハイレゾ(※)ではなく「サブスクリプション配信」と言う点がミソだろう。

サブスクリプション配信自体に縁のなかった年齢層、かつスマートフォンを持っている層にどれだけ「サブスクリプションってすごいですよ。何でも聴けますよ」と訴えたところで、相当な量をこなす音楽ファンでもない限り、そう簡単にはなびかせることも出来ないだろう。

ところが「井上陽水の『最新の』『高音質』音源が聴けますよ」「松任谷由実の(以下同じ)」となれば、ピンポイントかつ相当なマスに対して、サブスクリプションの存在を訴えかけることが出来る。

最初からそれがそこにあった若年層にサブスクリプションを訴える必要はない。「サブスクリプションが身近になかった層」に訴えかけるには、時代のアイコンであったり、もしくは人生に寄り添ってきた音楽を提供し続けてきたアーティストの音源をそこに投下すれば話は早い。

そしてもう一つ『最新』と言うのも大切な要素だろう。恐らくこの2者の音楽を追いかけてきた層は、今でも「新しい」ものには興味があるはずだ。経済を支えてきた、もしくは経済が盛り上がっていた時代に生きてきた層に対して、最新の物が体験出来る場が与えられると言ったインパクトは大きいに違いない。

まだまだサブスクリプション配信を解禁していないビッグアーティストは多く存在する。これで完全に時代はサブスクリプションに傾くとまでは言わないが、振り返ればその布石になるマイルストーンになったのが2018年9月だったと言える時がもしかしたら来るのかもしれない。

※井上陽水はハイレゾとサブスクリプションの同時解禁。