秋の夜長に。
釣瓶落としの夕暮れ時に中途半端に眠ってしまったせいで、手持ち無沙汰な夜を迎えてしまった。これも何かの機と、秋の夜長を決め込んだ。
選んだのは中島みゆきのライヴBlu-ray。ステイホームが叫ばれたあの時期に買っていたまま、未見で棚に並べられていたもの。
こういう時でもないと見ないよね、などと思って再生してみると、いやはや。
子どもの頃からテレビの中の歌っている女性が好きでした。歌わない女性にはほとんど興味を持つことがありませんでした。
その理由が今になって分かったような気がしたのです。
歌う女性には何かしら後光のようなものが差すことがあるのですね。中島みゆきは正にそれでした。
美貌、と言う単語がありますが、その言葉で飾るのがふさわしい得も言われぬ魅力、魔性の力を持った存在、それが今まで自分が惹かれてきた「歌う女性」なのだと。
まず耳が奪われる。それから視覚情報が入り、歌う姿に目が奪われる。歌い手と言う存在として理想ではないか。
これを自分はずっと繰り返してきていたのです。
従って、正確には、歌わない女性に興味がないのではなく、歌う女性に対して執着にも似た感情を持って没入してきたわけです。
秋の夜長、この歳になってようやく、自分の偏執に思い至った次第なのです。