リリース後に聴いて以降、耳を通せずにいたこのアルバムを。
明るさと切なさとが両立しているのが今作の特徴だったのだな。もちろんこのバンド、そしてチバユウスケならではの、デカダンで刺さる楽曲も多数収録されているのだけれども、その体温、質感がこれまでとは微妙に異なっている。
アーティスト写真で見ることの出来るチバユウスケの姿が、ここ数年で一気に年相応のものになっていることも、このアルバムの姿を紐解く何かの鍵になるのかもしれないとも。
歳を重ねて丸くなるなどと簡単に片付けるわけではさらさらないけれども、年齢なりの深みは確実に現れているように感じられるのだよね。
世の中を少し斜に見る姿から、それを直視しながらもアイロニカルであることを忘れない姿へと変わってきたことが、素敵な大人の姿としてとらえられる。生き様の根底にあるのはロックそのものなのかもしれないけれども、そこに人生の深さと渋さを重ねて歌い上げる様もまた、ロックの一つの有り様なのではないかと。
このバンドも2006年のデビューアルバム『Rollers Romantics』のリリースからもう16年も経っているわけで、それだけ年月を積み重ねれば、メンバー各々の音に対する姿勢も確実に変わってくるだろう。
それが反映されているのかどうかはともかくも、音はどことなくTHE BLUE HEARTSになっているかのような、そんな爽やかな音色が感じられるのと同時に、それらがアルバム内のピースとして有機的に働いていることも、本作が心地よいロックアルバムとして目に映る理由なのかもしれないな、とも。
変化を受け入れることは実のところはそれほど抵抗のあるものでもない、それが人間だよ、と演奏を通して訴えかけてくれているような、自分の背中を押してくれる作品となっているのであります。