音波の薄皮

その日に聴いた音楽をメモするだけの非実用的な日記

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大人への脱皮を図らずして人気を維持した嵐

嵐が音楽活動において大きな成功を収めた理由をなんとなく考えていた。それを導き出すにはジャニーズユニットの歴史を簡単に振り返るとよいのだろうと。

ジャニーズユニットの巨大なる存在感はSMAPの役割が大きな分水嶺になったのは間違いなく。SMAP以前のユニットは栄枯盛衰を伴っての存在であり、デビュー直後の瞬発力をどこまで維持出来るかにかかっていた。しかしその瞬間最大風速的な人気を保つために打った施策をもってしても、人気を長期にわたって維持することは困難だった。

その活動の場が音楽活動に依存していた、それ以上の展開が困難だったこともユニットが比較的短命に終わることを重ねてきた理由だった。

音楽だけでアイドルユニットを存続させることが難しいのは、今も昔もさほど変わりはあるまい。ファンに飽きが来ることに対して、次々と手を打っていかなければならない。

ジャニーズユニットの場合は「大人への脱皮」が命題として立ちはだかっていた。

若々しさ、エネルギー、キャラクターで爆発的人気を獲得した後には、それを模索し、そのための背伸びとも言える大人の色香を演出する楽曲を施してきた。そして常に挫折していた。

SMAPが開墾した、音楽だけでしか活動出来なかった存在から、バラエティ、ドラマ等のテレビ出演への展開、積極的なソロ活動等でその構成人数以上の活躍の場を拡げることで、ユニットを長期的な成功に導く方程式に乗せることの出来た大きな存在に嵐はなったと言える。

その先人の成功により音楽だけで勝負をする必要はなくなっていた。人気を維持するために音楽の方向性を変える、無理に大人を演出すると言った轍を踏む必要がなくなっていた。

人気を保つための土壌を築いたことで、音楽活動における自由度は格段に上がった。年齢は時間の経過とともに自然と重ねていくもの。一方で音楽活動においてはいつまでもファンの心をつかむ若さがあってもよい。自由度の高さは人気を保つための一つの鍵ともなった。

そのようなことをこのアルバムを聴きながらつらつらと考えた次第。楽曲毎にキャラクターやシチュエーションを演出すること、ソロ楽曲を織り交ぜること、若さのパワーから悩みまで、様々な要素を詰め込むことによって正に音楽におけるバラエティ番組を演出している。ポップスとしても明解であり、無邪気にそれを楽しむことが出来る。嵐が展開していた活動を一枚に凝縮させている。「音楽としても楽しめる嵐」がここにある。

ここではSMAP以降と言う文脈を用いたが、パッケージメディアの急速な衰退に伴う音楽を取り巻く環境がまた大きく変わったことで、くしくも嵐以降と言う文脈も今のジャニーズユニットには用いることが可能だろう。大きなパイから小さなパイを数打つ戦略へ。マジョリティの細分化とも言える現代の流れに次なる嵐を求めることはなかなかに難しいことであるのかもしれない。

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