音波の薄皮

その日に聴いた音楽をメモするだけの非実用的な日記

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MUSIC GREETINGS VOLUME ONE / 葛谷葉子 (1999 44.1/16 Amazon Music Unlimited)

休日の夜モードに入ってきても葛谷葉子。

最新作、ベスト盤と来て、やはりオリジナルアルバムも聴かないと嘘でしょうとなり、これを。1999年発売の1stアルバム。トータルプロデュースは松尾潔。アレンジャーに名を連ねているのは松尾潔、マエストロ-T、鷺巣詩郎、桐ヶ谷ボビーと言った辺り。本当にあの時代のJ-POPに確固たる地位を築いていたR&Bのメインブレインが集まっている。

葛谷葉子の個性、特徴とは何だろうか?と考えてみるのだけれども、芯を捉える表現が見つからない。類似性という意味で言えば同時期に同じくSONYに所属していた古内東子がパッと思い浮かぶのだけれども、葛谷葉子はそこよりはリズムオリエンテッド寄りになる気がする。

年代的な親和性が高いのももう少し下の層か。この時代のR&Bを好んでいた層は自分と同年代前後の年齢層と見受けられるので、そう考えるとやはり「僕ら寄り」か。

楽曲の作風も先に述べた松尾潔がメインブレインと言うこともあってか、あの時代の雰囲気を凝縮したかのようなパッケージになっている。とは言え、松尾潔が手腕を振るっていた平井堅、CHEMISTRY辺りと大きく異なるのは、女性ボーカルと言うこともあってか、リズムの力強さで押すよりは、葛谷葉子が書く歌詞やメロディを重視、尊重した、より「聴かせる」路線として作り上げられていることが挙げられる。楽曲の基礎となる部分へとスッと入り込める。

そう考えてみると、基礎はしっかりと出来ているのだけれども、それ以外の外野的な個性には若干乏しいのは事実。ソングライターとしては実力派でありながらも、ボーカリストとしての圧倒的個性には薄いのだよね。この時代のこのジャンルの歌い手の筆頭が宇多田ヒカル、MISIAであったことを考えると、そこに割って入るのはあまりにも酷な話。

それを今の時代になってリバイバル的に聴いている自分は、それらの峰となっているシンガーがもう既にR&B路線を追わなくなっており、比較対象がないプレーンな状態で聴けているからこそ、こうも一気に入り込んでいるのだろう。時代に泣いたシンガーであるとも言えるのだけれども、シンガーとしての活動を再開させた直後に出逢えたのは僥倖だな。

MUSIC GREETINGS VOLUME ONE