音波の薄皮

その日に聴いた音楽をメモするだけの非実用的な日記

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2013撰

突然ですが2013撰です。自分的締め切りが11月末なので、この辺で締めておこうかと。

例年同様、前年12月から今年11月に聴いた作品を、発売年に関係なく入手した時系列に並べております。ランク付けもありませぬ。

参照:成分2012 成分2013

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Texas Flood-30th Anniversary Edition
Texas Flood (30th Anniversary Edition) / Stevie Ray Vaughan (1983/2013)
ブルーズギターに求めていた快感はここに行き着いた。繰り出されるフレーズ、渋いボーカル、思わず身悶えしてしまうプレイ。これを聴きながら車を転がせば、どの道もアメリカへと通じる。30年前に出会えなかった不幸はあるけれども、それでも最新リマスタ盤のタイミングで出会えたことに感謝を。

5TH DIMENSION【アマゾンオリジナル絵柄トレカ特典付き】(初回限定盤B)(DVD付)
5TH DIMENSION / ももいろクローバーZ (2013)
アイドルのジャスティスを求めた結果、ここまでゴシックな位置に辿り着いてしまったか。前作と比較できるポイントが全く存在しない、今を駆け抜けるアイドルだからこそ出来る力業の応酬。5人のボーカルパワーを支えるトラックはどこまでも賑やかに、そして正面で構えるボーカルはどこまでも正義の旗を振りかざす。これが2013年を象徴するアイドルだ!

Amok
AMOK / ATOMS FOR PEACE (2013)
チルアウトと爆発寸前の真夏の朝方を彷彿させるような静かな進撃。しんしんと音は進み、最後に残るは聖なる破壊の余韻。ただひたすらに夜を掘り下げるアトモスフィア。アンバランスな世界の果てにあったのは、何も存在しない地平の果て。断崖の終わり。

街の14景
街の14景 / the band apart (2013)
メロディの幅が明らかに広がった。日本詞で勝負を仕掛けてきたこととの関連性は薄いのかもしれないが、「歌う」という行為に目覚めたかのようにメロディがはっきりと描かれている。邦楽バンドにしては不思議なほどに湿度を感じさせないアンサンブル。このバンドは静かに進化をしていく。

i'mperfect
i'mperfect / 凛として時雨 (2013)
評判の高さに最初は半信半疑。しかし蓋を開けてみればあっさりと心を奪われた。どこまでもソリッドに奏でられるバンドアンサンブル。薄刃のナイフでカーテンを切り裂いていくような脆さと圧倒的な音の壁。これがスリーピースで作られる音とは思えないほどの中身の濃さ。それでいてどこかやんちゃ坊主のような存在感が面白い。

僕たちの未来【初回限定盤】(CD+DVD)
僕たちの未来 / 柴田淳 (2011)
最新作から掘り下げていったら、ここであっさりとゴールに辿り着いた。包容力のあるボーカルとちょっとしたスパイス。紙で指を切ってしまった時ににじむわずかな血液と痛みを目にしたかのような肌の脆さを教えてくれた。僕が女性ボーカルに求める安らぎと棘の両方を届けてくれる。

メカクシティレコーズ(初回生産限定盤)(DVD付)
メカクシティレコーズ / じん(自然の敵P) (2013)
恐らく今年最も聴いた作品。ボーカロイドという一ジャンルに収めてしまうにはあまりにももったいないトラックの普遍的な格好良さと、ボーカロイドだからこそ可能になるメロディラインの起伏に耳を奪われた。特にバンドサウンドの楽曲はそこいらのバンドよりも格段にロックしていた。今年の酷暑を乗り越えることができたのはこの作品のおかげ。

新しい青の時代
新しい青の時代 / 山田稔明 (2013)
ポップスパークル!初夏の風を思い起こさせるメロディと、半径数メートルの世界を切り取ったスナップ写真のような歌詞。そしてそこここに登場する猫への愛情。小沢健二のかの傑作が「犬」ならば、この作品は同系列同位置の「猫」だろう。どのような状況であっても、自分の心を害することが一切なかった奇跡のような一枚。

ELECTRIC
Electric / PET SHOP BOYS (2013)
PSBが本気を出して「今」に取り組むとこのような結果になるのだよ、と説得させられる一枚。ひたすらにダンサブル。ひたすらに煌びやか。9曲という短い尺の中にこのユニットの全てを詰め込んだかのような濃い世界。とあるところで突然進化を止めてしまった感があったのだけれども、それを一気に払拭してしまった。ひたすらに踊れ。

なんだこれくしょん(初回限定盤)
なんだこれくしょん / きゃりーぱみゅぱみゅ (2013)
去年に引き続いての撰出。中田ヤスタカの頭の中身をスキャンすると、乙女成分と子供成分とそして飽くなきポップへの追及成分が検出されるのではないか。歌い手によってプロデュースの観点を変えて時代に挑むその心意気が美しい。それはイノセントとしか言いようのないこのボーカルがあってこそ映える世界なのだろう。

予襲復讐
予襲復讐 / マキシマム ザ ホルモン (2013)
世間の白帯ども、虐げられている者よ、とりあえずこれを手に取り涙するがいい。ひたすらに汗を流し続け、Tシャツに黒い染みを作り、それでも歩くしかないんだよという応援歌にも聞こえてくるふざけた世界。邦楽のバンドが作りたい音は実はこの一枚で一通り揃うのではないだろうかとも思われるヘビーさとポップさとラウドさ。気が触れた人間が生み出す、クレイジーな正義。

レイディ・プット・ザ・ライト・アウト
Lady Put The Light Out / Frankie Valli (1977/2013)
ブルーアイドソウルとアーリーディスコをブレンドして甘みを加えたら、高速道路を滑り行く高級車のような洗練された流線型が生まれた。去年から聴き始めた山下達郎のラジオ番組で知った作品は他にもあるけれども、とにかくこの一枚が自分の心を撃ち抜いた。子供には分からない、大人ならではのスイートな世界。

ムーヴ(初回限定盤)(DVD付)
MOVE / 上原ひろみ (2012)
この人には過去数作裏切られてきたので前評判を半信半疑で聴いてみれば、最新作はなんてスリリングなトリオ!ようやく報われたような気分に。どの楽器も主張すべきところで主張し、ピアノが一人暴走することもない。それでいて圧倒的な存在を持っているところに末恐ろしさを感じさせられた。

一触即発(+2)(紙ジャケット仕様)
一触即発 / 四人囃子 (1974/2007)
NHK-FMのプログレ三昧で遭遇してしまった一枚。英国プログレ最盛期でもある73年の翌年に作られたとは思えない、誤解を恐れずに言えばプログレの鑑のような一枚。儚い歌詞の世界と同じく儚いボーカル。プログレの王道のような展開に日本人ならではのワビサビを加えて出来上がったのがこの世界観。どことなく当時の邦楽のエッセンスが感じられるところにも親しみを覚える。

LEVEL3
LEVEL3 / Perfume (2013)
前作のポップさを置き去りにして、またしてもバキバキなテクノ。Perfume作品に外れなし。四作連続での撰出。とは言いながらも、シングル曲の行方を聴いていればその実不安感もあったのだけれども、アルバムとして構築されたら見事にピースが噛み合った。中田ヤスタカ作品を二枚選ぶことに若干の抵抗はありつつも、それでもやはりその掌の上で踊らされる自分がいる。

色彩
色彩 / Polaris (2013)
数年ぶりの復活は裏切られることもなく、そして見事に裏切ってくれた。耳の中で完全に固定されていたあの音がようやくここにきて氷解したかのようなこのサウンドスコープ。ミニアルバムというニクい展開で届けられたその中身は、非常に凝縮された今のPolarisを現わしている。楽器の一つ一つに神経を張り巡らしていることがよくわかる。傑作。

Early in the Morning
Early in the Morning / James Vincent McMorrow (2011)
曇り硝子の向う側に広がる曇天模様。ただひたすらに重苦しく鬱々と届けられるハンドメイドの音作り。それでも底辺にあるアコースティック感に救われるか。演奏の全てを自ら手がけているからなのか、ベルベットのような滑らかさがまた自分の心をくすぐる。静かに沈み行く音楽。

youth(青春)
youth(青春) / bloodthirsty butchers (2013)
吉村秀樹遺作。雄々しく尖った三角形に一人加えて四角になったその姿のほとんどが模索の時期でもあったように思えるが、今となってみればここでようやく△が□になり、大団円の○で終わったのだな、と思える。それはまるで太陽が綺麗な○に見えるかのような輝かしさを伴って。

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以上17作。去年が10作に満たなかったことを思えば、今年はずいぶんと豊作だったような。ここに選ばれずとも、聴いていて面白かった作品は他にも沢山あります。いい意味で音楽を聴く時間が減ったので、一枚に割く時間が濃縮されたようにも。その分集中して聴ける環境にあったとも言いますか。ラインナップを見ると「頑張って音楽経験値の背伸びをしている高校生」という感は否めませんが。ま、無理に守備範囲を拡げるような聴き方も今さらできませんし、自分に合わない音楽を聴くほどマゾでもないですし、お財布にも限界はありますので。

ということで、2014年もまた素晴らしい音楽に出会えますように。