古来の重量級の演奏によるブルックナーももちろんそれはそれで「結構なクラシック音楽を聴いた」と言った修業的満足感を得ることが出来るものなのですが、近年の華やかさに目を向けた演奏もまた自分の好みでありまして。
どうもオールドファンには重厚長大なブルックナーの方が受けがよろしいようなのですが、最近のシャープかつスポーティな解釈によるそれも、よい意味で気軽にブルックナーに接することが出来る契機になるものだと思うのです。
そこでこのサイモン・ラトルとロンドン交響楽団による一連のブルックナーレコーディングです。お腹にズッシリと来るようなヘヴィ級のブルックナーでは決してありません。流麗かつスマート。スッキリと見通しがよい演奏であるために、ブルックナーにおいて要所要所でフックを求める方々には恐らく評判は決してよくないでしょう。
私個人としては「それはそれ、これはこれ」でよいと思うのです。解釈は時流によって異なってくるものでしょうし、望まれるスタイルもまた然りです。ヘヴィネスを求めるのであればそれを得意とする指揮者や楽団のそれや過去の名演を楽しめばよく、もっとモダンに軽やかな演奏を求めるのであれば、本録音は適切な解であると考えます。
舞踏会で流れているかのごとく滑り行くブルックナー。近年のブルックナー録音物の中では、もっとも「軽妙」な演奏の部類に入ると言えるかもしれません。限りある時間と引き替えにして本作品を聴き、そこで損をしたとは決して思わせない現代の味。私自身がそれを潔しとするのであれば、もうそれで十分なのです。
まぁ、うっかりとあちこちのレビューを読んでしまったので、このような文章になってしまったのです。もっともっとひどい言葉でそれらレビューを罵りたい気分ではあるのですが、それではSNS依存集団と何ら変わるところがありませんので…
…この辺にしておいてやるっ(捨て台詞)、って、私もそんなものに目を通さなきゃいいのに。