上原ひろみ最新作は「Hiromi's Sonicwonder」としてのリリース。ベース、ドラム、トランペット、そしてピアノの編成。
これまで上原ひろみが積極的に携わってきたトリオ形態に比較すると、譜面を音符で埋めない、引き算によるサウンドメイキングがなされているように感じ取れた。四人のバランスを保ちながら、いかにその演奏のスリルを楽しむかと言った雰囲気が漂ってくる。ビシビシと張り詰めた感覚ではなく、会話を基にして音楽~作品を作り上げていくその過程を描いているかのよう。全体的に多幸感ある作品に仕上がっていると捉えられた。
今作ではトランペットの主役感が実に大きい。録音のバランス的にそれはないと否定出来る向きはあるものの、ピアノが前面に躍り出る位置づけからはやや視線をずらしたところに着地している雰囲気が感じられる。それがこれまでの上原ひろみのピアノトリオとは大きく異なるポイントであろう。
ここしばらく封印気味だったムーグやシンセをアグレッシヴに使っているあたりにも、「ピアノ」からわずかに引いた音作りを試みたのではないかと思えるほど。
これらのことからも若干の絶対的な主役不在感は否定出来ないものの、それもまた再びの新境地へ至る第一歩だと考えると納得の行く内容。上原ひろみはきっと回遊魚のように新たなる音を探し求め、音楽の海原を泳ぎ続けるのだろう。