全くもって予備知識なしで聴きました。それぞれソロ活動をしている男女ボーカリストがデュオとして名曲をカヴァーしている作品。
ボーカリストとして実績のある方によるカヴァーアルバムなので、安心感をもって最後まで聴き通すことが出来ました。それ以上にデュオ、言うならばデュエットでありながらも、べたつかない感覚が素敵であるとも思いながら。カラッとしていながらも雰囲気は十分。距離感を保っているカップルによる気心の知れた絡み、とでもたとえると良いでしょうか。
それぞれにソロパートはありながらも、トータルとしては男性ボーカルが女性ボーカルをさり気なく支えているようなスタイルも、このアルバムの素敵さ加減にプラスになっているようにも感じられました。
ボーカルスタイルが洗練されたものであることも功を奏してか、聴き終えた際にさらっとしたものが手元に残る感覚もまた素敵かと。楽器サポートのでしゃばらない、さり気ない立ち位置も絶妙。1時間超えのボリュームでありながら、もたれることも、ダレることもなく、じっくりと堪能させて頂きました。
そして、洋楽ポップスをジャズのフィルターにくぐらせ、かつ日本向けにローカライズさせ、再度ポップスに変換させると、このような形のボーカル作品になるのではないかと考えながら聴いていました。
従っていわゆる典型的なジャズでは決してなく、よい意味でオシャレに仕立てられたポップスとして捉えることが出来るかと。
音楽をリーチさせる先が明確である以上、それをローカライズさせることに罪はありません。より聴きやすく、また作品としても「アクを抜く」意味合いにおいてメリットがあると思うのです。本作はその点でもよい事例ではないかと。
加えて改めてSpotifyは真剣に聴けるソースではないと痛感。この作品を再生させた途端に、その制限された音質によって音源そのものが頭打ちにされていると感じました。やはり圧縮音質でのサブスクリプションサービスは、試聴用であったりカジュアルに音楽を楽しむためのツールのようなものだと。
そんなこんなでハイレゾ音源を購入して聴くに至った次第。こう言った音作りに隙間のあるサウンドはハイレゾで映える。予想通り、音質は雲泥の差でありました。