自分の中にあった「やなぎなぎの既視感」が存在しないアルバム。
これまでやなぎなぎを聴いていてどうしても拭えなかった、どこかで聴いたことがあるのだけれどもそれが何かがはっきりしないモヤモヤ感が、ここには全く存在しないことに驚いた。
楽曲毎の振れ幅が大きいことと、歌い手としてのやなぎなぎが明瞭なところが今作のポイントであり、それだからこその至った感想なのだろうなと。
ふわっとした輪郭の中に相当にしっかりとした芯のある声を持った歌い手だとは思っていたけれども、その両端がブレンドされた境界のゾーンにおいても、歌声が間違いなく確固として彼女のものである、と。「○○系」な要素が押しやられて、やなぎなぎとしてのスタンスが確立されているとも言えるかな。
全体として間違いなく現代的アニメ系のど真ん中な音作りなのだけれども、それがイヤミにもくどさにも繋がらず、楽曲の織りなす各々のカラーに耳を委ねることが出来る。やなぎなぎのビター＆スイートな感覚。
そのようなことを考えながら聴き入っていたら、あっという間にアルバムが終わってしまった。もう一度聴いてみようかしら？と思わせる、後を引く聴了感も多分に含んでいる。
これはなかなかの快作なのでは。
