音波の薄皮

その日に聴いた音楽をメモするだけの非実用的な日記

私とドリカム-DREAMS COME TRUE 25th ANNIVERSARY BEST COVERS- / V.A. (2014)

以下、この作品を聴きながらTwitterに書いた内容を簡単にまとめて加筆訂正した感想文。

『私とドリカム』を借りた。今聴きながらこれを書いている。とりあえず前半から何やら雲行きが怪しい。軽いのだ。ドリカムが持つ求心力のようなものが決定的に失われてしまい、骨抜きにされている印象。

アレンジに愛がない、ボーカルに愛がない。リスペクト精神に欠ける。と、思ったらHYの「決戦は金曜日」カバーでようやく原曲に対する愛が感じられた。この人が実践して見せているように、吉田美和を歌うと言うことは相当な覚悟が求められるという証拠だ。

何も物まねをしろと言っているわけではない。原曲に込められた曲への愛情を、しっかりとかみ砕いているかどうかが大切なんだ。歌の上手い歌手が上手く歌っても、それは当然のことであって、せめて自分色に染め上げるだけの力の入れ方があってもよかろうに、と言いたい。

ドリカムの歌はただでさえ難しいのだから、カバーをする以上「歌いこなす」レベルは当然の最低ライン。あとはいかに自分の色を乗せるかというところにかかっている。そして吉田美和には楽曲に込められた数分間を飽きさせない力があるのだけれども、今のところその集中力の高さを保ったボーカルに出会えていない。全てが及第点。

アレンジもなぁ。ぱっと目が覚めるようなものが見うけられない。「そう来たか!」的な発見が今のところ全くない。せいぜい「ま、そのボーカリストにはそんな感じが合うんだろうね」的な。これはあなた方のアルバムではなく、末恐ろしいトリビュートカバーアルバムなのだよ、という恐怖心が見えない。勝負にかからないでどうするよ?

お。もう一つ面白いボーカルが来た。まさかの水樹奈々だった。アレンジも結構いい感じに解体済、ボーカルは棒球のストレート。原曲でのボーカルのウェットさを完全に吹き払って、からっと歌い上げている。声優歌手筆頭の楽曲内の声の使い分けが実に上手く行っている。これなら許せる。これくらい自分の味付けに自信を持って「破壊」しないと面白みに欠けるんだよ。ここまではその「破壊する」、ソフトに言えば換骨奪胎するという意気込みに欠けている。

ここまで全滅に近い状態になっていると言うことは、吉田美和という人は、それだけ相対的に感情過多なボーカリストだったってことなのか?カバーしている人たちのボーカリゼーションがあまりにもあっさりし過ぎて、フックに欠けるということは、実はそういうことの現れだったのか?

ん。中島美嘉も面白い。羽毛田丈史のピアノが少々うるさいのが残念だけれども、ボーカルが随分とドライブしている感がある。この人、時に侮れないから面白いのだよな。でもやはりオーバープロデュース。もったいないなぁ。このアルバムはボーカリスト品評会のためにあるアルバムであって、あなたのピアノ独奏会ではないのだが。

お、もう一つ面白いのが来た。実は、この選曲の中で一番期待をしていた組み合わせかもしれない倖田來未。選曲が「IT'S SO DELICIOUS」だったので少しばかり期待していたのだ。その期待の70%くらいは応えてくれた。そうなのだよ。この曲の原曲は、吉田美和が見せる表情の中でも数少ないビッチさが出ている曲だから、相性はいいんじゃないかと思っていた。もっとビッチに歌ってくれてもよかった。残りの30%は単調なトラックに責任転嫁。

さてはてはいはい。最後の曲までやって来ました。

最後の疑問。このアルバムのターゲットはどこにあるんだろう。並んでいるアーティストのファン?ドリカムのファン?なんか支点も力点も作用点も定まらないカバー集だった。相対的に、吉田美和と中村正人のタッグが作り上げるポップスは強力であるという証明にはなったかな。

で、ここに名前が出てこなかったアーティストのカバーについては、推して知るべし。そこが問題なんだよ、そこが。