早々に寝落ちをした夜は、早々に目が覚める。
本日解禁の坂本真綾の新譜を軽く聴き流しているうちに、頭の中にマーラーの5番が鳴り響いた。
どの演奏を聴こうかとしばし考えた後に、ジンマン指揮、チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団のそれにすることに。
マーラーに必須とされがちな圧倒的な画力、筆圧とはまた異なる演奏ではあるけれども、端正さと美しさで魅せてくれる。曲線美的なマーラーとでも言えばいいか。もっと乱暴に表現するなら「暑苦しくない」。
演奏は当然のように緻密に編み上げられているが、緩急の付け方が自然体に感じられる。息苦しさが薄いのもこの演奏の特色か。
例えばテンシュテットのマーラーは人を凄惨なる死の世界観へと導く演奏だと思っているが、このマーラーは天上世界、宗教的天井画に描かれる、ふくよかなる世界へと導くそれだと思えるのだ。