音波の薄皮

その日に聴いた音楽をメモするだけの非実用的な日記

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労働なんかしないで 光合成だけで生きたい / スガシカオ (2019 AppleMusic)

こりゃぁまぁ…。

スガシカオのブライトサイドにおける傑作であると認定。ここまで突き抜けた作品が届けられたのは初めてだわ。

この人は人間としての葛藤が多すぎて、それが前作には前面に出ていたがゆえに傑作でも聴くのは辛いという悪循環に陥っていたのだけれども、今作は葛藤から一巡りして、実は解脱してしまったのではないかと思わせてしまうほどに軽妙。

詞の内容は相変わらずスガシカオなのだけれども、そのニュアンスがこれまでとは全く異なる。人生こんなもんだよ、と投げやりにでも言いたげな適当感が全体から漂ってくる。その感覚が、「違う」スガシカオとなって現われているのではないかと。

人間、適当に生きることが難しい人もいるわけで、スガシカオがその領域に入ったことで、聴き手である自分も「ああ、やっぱりそうですよね」と思わず肯いて同調してしまう安心感は、各々がそれぞれに歳を重ねることで、余計なしがらみを剥ぎ捨てることに成功していることの証明でもあろうかと。

もしかするとそれが解脱というものなのかもしれない。何かから脱して、ようやく大きく気楽に息をすることが出来る。それまで時間がかかったよね、とお互いに労いながら、じゃ、こんな作品でも聴いていってよ、と置き土産でもされたような気分になれる、そのような作品。

そもそもがこのアルバムタイトルなのだ。すっかり脱しているんだよ。スガシカオもそれを聴いている自分も。