このアルバムは30代の自分にとってのバイブルでもあり、また、今となっては己の人生の苦い部分が全て詰まっていると言っても過言ではない。
感情のるつぼとしてのロックアルバムであり、怒りからアパシー、そして思耽、茫漠と言ったものまで、全8曲にぎっしりと詰め込まれている。
ギター、ベース、ドラム。3ピースで繰り広げられる音にしてはあまりにも分厚く、そして繊細さの極みである細やかさとの共存が、この作品をより一層、ロックアルバムにおける貴重な存在としての意味を持たせている。
感情を包み込む脊髄からはみ出してしまった神経を、手で直接触れるかのような行為。それこそが吉村秀樹が生み出すロックだった。
今でもこの作品を聴くと、自分の心ではなく神経がざわめいてしまうのは、この作品がこの作品たるゆえんからであろう。
正直なところ、本作は非常に取っつきにくい。一見さんお断りと言った雰囲気まで漂わせている。生半可な心で近づくのであれば、斬られてしまうかのような鋭さまで持っている。
それでも時折吸い寄せられるようにして聴いてしまうのは、まだ自分の中にはみ出してしまったその痕が残っているからなのかもしれない。それは若さの残滓のようなものなのか、はたまた自分の中にまだくすぶっている何かの欲が顔を出すからなのだろうか。